研究実績の概要 |
平成27年度は,北海道東部沿岸,下北半島,三陸海岸北部,の岩石海岸を中心にして,岩石海岸カタログを作成した。その結果の解析に基づく成果をまとめると以下の通りである。 1)北海道東部沿岸では完新世離水海岸地形(離水波食棚)のレベルは,最大2つ(L1,L2),根室半島ではL1:2.5-3m,L2:1.5mほどである。知床半島では,L1:6-8m,L2 :3m前後,現成波食棚の発達が良い。海溝型巨大地震の影響を直接受けない知床半島南岸沖に想定される海底活断層(北傾斜の逆断層)の活動によって一回あたりの海岸地震隆起量が3~4m,発生間隔が3,000年前後であること,地震規模は7.4前後であることがわかった。奥尻島では,1993年後の地震後の変動を測地学的に追跡した結果,地震間地殻変動が更新世旧汀線の傾動と調和的であることが判明した。 2)下北半島では,完新世離水海岸地形(離水波食棚)のレベルは,最大2つ(高位よりL1,L2 とする)である。L1の標高 は2-5m前後,L2 は-1.5mであり,3つの隆起ブロック単位が地震セグメントに対応していると考えられる。これらは直下の海底活断層起源の地震性地殻変動の累積性を示唆し,単位隆起量は2m前後,地震規模としてM7.2-7.5が推定される。 3)三陸海岸北部では標高4~5mに完新世海成段丘が広く認められたが,地域によって離水年代が異なり,1,000年前,3,300年前以前,4,800年前以前の年代を得た。これらは完新世に少なくとも3回の地震隆起イベント(E1,E2,E3)の発生を示唆し,E1 は6,200年前に4~5mの隆起を,E2 は3,800年前に5-6mの隆起を,E3は1,000年前に6-7mの隆起を伴ったことが推定された。短期間のこのような隆起は沖合いの海底活断の起源のM8大地震に伴う変動かプレート境界型M9巨地震に伴う余効変動か,いずれの可能性があることがわかった。
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