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2013 年度 実績報告書

古代日本成立期の自然環境基盤:平城京と奈良盆地周辺の完新世環境変動から

研究課題

研究課題/領域番号 23300338
研究機関奈良女子大学

研究代表者

高田 将志  奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (60273827)

研究分担者 宮路 淳子  奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (30403322)
出田 和久  奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (40128335)
光石 鳴巳  奈良県立橿原考古学研究所, 埋蔵文化財部, 主任研究員 (70263548)
堀 和明  名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (70373074)
研究期間 (年度) 2011-04-01 – 2015-03-31
キーワード古代日本 / 自然環境基盤 / 平城京 / 奈良盆地 / 完新世
研究概要

奈良盆地中央部の大和郡山市馬司において2本のオールコアボーリング(MKl,MK2)を実施した。また既存ボーリング資料も用いて、岩相およびN値をもとに,奈良盆地および大和川下流域河内平野の上部更新統と沖積層とを区分した.これらの結果から、奈良盆地の沖積層の層厚は概ね3m程度と見積もられ、既存研究で得られている放射性炭素年代値と調和的であった.また沖積層のかなりの部分は、約2,000yBP以降に堆積したものであった.この結果は大阪湾の海面カーブに対応しておらず,盆地内の沖積層形成は海水準変動の影響を強くは受けておらず,奈良盆地の侵食基準面は,亀の背狭窄部における大和川の水面標高であると考えられる.
既存ボーリング柱状図から作成した奈良盆地における南北方向の地形地質断面図からは,盆地南部の沖積層が北部に比べて相対的に厚いことがわかった. 盆地中央部から南部にかけて自然堤防がよく発達していることからも,洪水氾濫の頻度が高かったことが推測される。盆地南部において沖積層の層厚が大きいのは,涜域面積の大きさと流域内の山地の起伏などに依存している可能性が指摘できる。
奈良盆地における弥生時代~鎌倉時代の遺構検出面深度の値からは飛鳥時代以降の堆積速度の増加も示唆された.既存の花粉分析結果によれば,この時期には既に植生の二次林化が進行していたことから,人間活動による山地の荒廃が供給土砂量を増加させ,沖積層の形成に影響を与えた可能性も考えられる。
平城京跡の左京五条五坊二坪遺跡では、奈良時代側溝跡堆積土の珪藻分析を行い、現生珪藻の生態情報を基に、当時の水環境について考察を試みた。分析の結果、当該の側溝には、清澄な河川水、浅い池沼からの流入水に加え、おそらく人間活動に由来する有機汚濁水が混入していたものと思われ、当時の平城京とその周辺部における水環境の一端が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成25年度は、奈良盆地中央部で2本のボーリングコア試料を採取することができ、既存ボーリングコア資料の収集整理と併せて、奈良盆地の完新統に関する概要を掴むことができた。また、比較的多くの遺跡発掘現場から堆積物試料の収集を行うこともできたため、平成24年度までの若干の遅れをやや、取り戻したと考えている。遺跡報告書の活用などについても多少の成果が見え始めたことや、遺跡堆積物の珪藻化石分析なども進んできたため、かなり新しいデータが集まりつつあると考えている。これらの分析解析については、今年度も継続する必要があるが、最終報告に向けて、一定程度の成果が得られる方向で推移していると捉えている。また幸いにして、奈良盆地内で、遺跡発掘現場からの新たな情報も付加されてきたことと、今年度に関しても、いくつか新しい発掘現場情報が得られる見込みであることから、これらの情報についても、最終報告に向けて活用可能な見通しが得られている。したがって当該研究課題全体を通しては、概ね順調に進展しているとみなしている。

今後の研究の推進方策

本年度は、これまでの成果も踏まえつつ、以下の各項目について検討する。
1)年度当初に、グループ全体で情報交換を行い、これまでの研究の進展状況を整理した上で、本年度の研究実施計画について意思疎通を図る。2)昨年度までの取り組みに引き続き、研究対象地域における遺跡発掘調査報告書の収集・分析を行う。3)2)に加え、考古・歴史地理・古環境関連のその他文献資料の収集や、既存情報ボーリングデータなどの収集についても、ひきつづき実施する。4)昨年度に実施したボーリング調査で得られたコア試料についての分析を進める。5)引き続き、遺跡発掘現場に赴き、必要に応じて試料提供を依頼する。6)遺跡発掘現場やボーリング調査で得られた試料の堆積層解析(シークエンス層序学的解析;含、粒度分析)を引き続き行う。7)6)と平行して、ESR/TL/OSL 年代測定やAMS14C 年代測定、各種の化学的分析(蛍光X線分析等)や生物学的分析などを実施する。
以上の各調査項目を総合して、奈良盆地とその周辺域に分布する完新統から、どのような古環境像が得られるか、最終報告に向けた総括を行う。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] 現河床堆積物に含まれる石英のESR信号特性―木津川流域を対象として―2014

    • 著者名/発表者名
      野曽原吉彦・豊田新・高田将志・島田愛子・吉田真徳
    • 雑誌名

      ESR応用計測

      巻: 30 ページ: 4-11

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Characteristics of ESR signals and TLCLs of quartz included in various source rocks and sediments in Japan: a clue to sediment provenance.2013

    • 著者名/発表者名
      Shimada, A., Takada, M. and Toyoda, S.
    • 雑誌名

      Geochronometria

      巻: 40 ページ: 334-340

    • DOI

      10.2478/s13386-013-0111-z

    • 査読あり
  • [学会発表] 平城京左京五条五坊二坪遺跡から得られた珪藻化石群集2014

    • 著者名/発表者名
      三宅由香・前田俊雄・伯耆晶子・高田将志
    • 学会等名
      日本珪藻学会第35回大会
    • 発表場所
      名古屋大学
    • 年月日
      20140426-20140427
  • [学会発表] Signatures of ESR signals and TL observed in quartz of Kizu river sediments and in host rocks.2013

    • 著者名/発表者名
      Nosohara, Y.; Toyoda, S.; Takada, M.; Shimada, A.; Masanori, Y.
    • 学会等名
      American Geophysical Union, Fall Meeting 2013
    • 発表場所
      San Fransisco
    • 年月日
      20131209-20131213
  • [学会発表] 現河床堆積物中に含まれる石英粒子のESR/TL特性.

    • 著者名/発表者名
      島田愛子・豊田 新・ 高田将志
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2014年大会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜会議センター
  • [学会発表] 奈良盆地における沖積層発達を規定する要因.

    • 著者名/発表者名
      堀和明・ 伊藤信朗・高田将志
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2014年大会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜会議センター

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公開日: 2015-05-28  

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