研究概要 |
1.未分化型胃がんのマウスモデルの解析 我々は、細胞接着分子E-cadherin(Cdh1遺伝子がコードする)と、がん抑制遺伝子p53を胃特異的に欠損する(Atp4b-Cre^+ ; Cdh1^<loxP/loxP> ; Trp53^<LoxP/loxP>, DCKO=double conditional knockout)マウスを作製した。このDCKOマウスにできた未分化型胃がん(diffuse-type gastric cancer, DGC)の原発巣、リンパ節転移巣、ヌードマウス移植腫瘍から初代培養を行い、各々から主に球形の細胞からなる培養細胞の樹立に成功した。 近年、micro(mi)RNAとがんとの関連が明らかになってきた。血中のmiRNA量は、がんの診断マーカーの一つとして注目されている。我々は、担がんDCKOマウスにおいて、血清、原発がん、リンパ節転移巣におけるmiRNA量をマイクロアレイ法で解析した。その結果、血清と原発がんでともに高いmiRNAなど、いくつかを候補とした。DCKOとコントロールマウスについて、3,6,12か月に血清を得て、これらのmiRNA量を定量的に測定した。その結果、4種のmiRNAでは、6か月と12か月齢において、DCKOマウスの血清中でコントロールマウスより有意に高かった。一方、まだがんができていない3か月齢では、差は無かった。以上から、血清中のmiRNA量は、がんの診断マーカーになりうることが示唆された。 2.血液白血球DNAのメチル化の程度とがんの有無、および生活習慣との関連の解析 IGF2遺伝子のメチル化を詳しく調べるため、胃がん患者の血液白血球DNAをbisulfite処理した後、クローニングして各々のクローンの位置12と13のCpGのメチル化を解析した。アレルについては、制限酵素処理で塩基の違いを確認した。その結果、調べた5例はすべて、インプリンティング状態を保持していた。しかし、メチル化(+)アレルでは脱メチル化が、またメチル化(-)アレルでは新たなメチル化が頻度はいろいろであったが見られた。従って、IGF2遺伝子のメチル化状態は変わりうることがわかった。
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