研究課題
1.新たながんのバイオマーカーとしての血中マイクロRNA量と胃がんとの関連に関する研究我々はヒトの未分化型胃がん(DGC)に形態学的にも分子生物学的にもよく似た胃がんを発症する世界初のマウスモデル(DCKO)を作製した。最近、がんの新たなバイオマーカーとして血中のマイクロ(mi)RNA量が注目されているので、我々の胃がんマウスモデルを用いて、胃がんの早期診断に利用可能な血中miRNAの候補の同定を試みた。始めに担がんマウスと正常コントロールマウスの血清をmiRNAマイクロアレイで比較して、担がんマウスで高く、コントロールマウスで低い複数のmiRNAを候補とした。次に定量的PCRで個別のマウスの血清中miRNAを定量した結果、4個のmiRNAが進行がんだけでなく、早期でも違いを示し、有益ながんのバイオマーカーとしての可能性を示した。現在、上記のmiRNAについて、ヒト胃がん患者と非がん対照者の血漿中での量を定量的に測定し、胃がんの早期診断などに応用できるかを解析している。2.エピジェネティクス治療薬のスクリーニングDGCの遺伝子発現プロファイルを解析した結果、がんで高頻度にエピジェネティクス変化を受けている遺伝子群の発現低下と、それらのエピジェネティクス変化を制御する遺伝子群の発現上昇が認められた。そこで、エピジェネティクス治療薬をDGC由来細胞株に処理した。p53ノックアウトマウス胎仔胃粘膜上皮由来細胞株(Trp53-/-、造腫瘍能なし)とDCKOマウスのDGC由来細胞株(Cdh1-/-Trp53-/-、造腫瘍能あり)にDNAメチル化阻害剤、HDAC阻害剤などの既存のエピジェネティクス治療薬を処理した結果、DNAメチル化阻害剤がマウスDGC細胞株に対してのみ細胞増殖抑制を示した。今後、臨床応用可能なエピジェネティクス治療薬の検索を目指す。
2: おおむね順調に進展している
1.胃がんにおけるエピジェネティクス変化とそのバイオマーカーとしての応用新たに、最近注目されている血中miRNAレベルに着目し、胃がんマウスモデルにおいて、バイオマーカーとして有望な4個のmiRNAを同定できた。2.未分化型胃がん(DGC)マウスモデルの解析と応用マウスモデルDGCの遺伝子発現プロファイルを解析した結果、ヒト胃がんで高頻度にエピジェネティクス変化を受けている遺伝子群の発現低下と、それらのエピジェネティクス変化を制御する遺伝子群の発現上昇を認めた。この結果よりDGCの発症にはエピジェネティクス変化が重要な役割を果たしていることを明らかにした。
1.胃がんにおけるエピジェネティクス変化とそのバイオマーカーとしての応用平成25年度は最終年度になるので、胃がんマウスモデルで同定した4個のmiRNAについて、ヒト胃がん患者と非がん対照者の血漿中での量を定量的に測定し、ヒト胃がんの早期診断などに応用できるかを解析する。2.未分化型胃がん(DGC)マウスモデルの解析と応用DGC由来細胞株の培養系と免疫不全マウスにおける移植系を用いて、複数のエピジェネティクス治療薬の抗腫瘍効果を検索して、臨床応用可能な治療薬の開発を目指す。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件)
Br J Cancer
巻: 108 ページ: 932-940
doi: 10.1038/bjc.2013.30.
PLoS ONE
巻: 8 ページ: e62589
doi:10.1371/journal.pone.0062589.
Cancer Res.
巻: in press ページ: in press
doi: 10.1158/0008-5472.CAN-12-3231
Int J Cancer
巻: 131 ページ: 2596-2603
doi: 10.1002/ijc.27554.
PLoS One
巻: 7 ページ: e33608
doi: 10.1371/journal.pone.0033608.
J. Epidemiol.
巻: 22 ページ: 384-394
doi: org/10.2188/jea.JE20120003
日本臨床
巻: 70 ページ: 1660-1665