研究課題
正常細胞には異常細胞を増やさないためのさまざまな恒常性維持システムが備わっている。そのひとつが「細胞老化」である。細胞老化とは正常細胞にDNA損傷など発癌の危険性のあるストレスが加わると、誘導される不可逆的細胞増殖停止である。最近、細胞老化をおこすと、様々な炎症性サイトカインが大量に分泌されることが明らかになった。本研究では、細胞老化によって引き起こされる持続的サイトカイン分泌が癌微小環境形成に及ぼす影響を解析している。昨年度までの研究で、化学発癌による肝癌誘発実験で形成された肝がん部に存在する線維芽細胞において細胞老化が誘導され、それにともなって炎症性サイトカインが発現する癌微小環境を形成することを確認できた。炎症性サイトカインの発現は、TLR4を介するシグナルによって誘導される可能性が示唆されていたが、TLR4KOマウスを用いて、同様の肝癌誘発実験を行ったところ、予想に反してTLR4KOマウスで発生する肝腫瘍数は野生型と比べて減少することはなかった。今年度は他のTLRノックアウトマウスを用いて検討したところ、TLR2KOマウスで、肝がん形成の抑制が認められた。TLR2のリガンドとしては、グラム陽性菌の外膜の構成成分であるリポタイコ酸などが知られている。そこで、マウスの腸内細菌を調べたところ、肥満マウスではグラム陽性菌が著しく増えていたことから、腸肝循環を介して肝臓に到達したグラム陽性菌の膜成分が、TLR2を介して炎症性サイトカイン誘導に関わっている可能性が示唆された。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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