研究課題/領域番号 |
23300348
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
増永 慎一郎 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (80238914)
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研究分担者 |
永澤 秀子 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (90207994)
田野 恵三 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (00183468)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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キーワード | 酸素化休止期腫瘍細胞分画 / 低温度温熱処置 / ティラパザミン / ウォルトマニン / 分割ウォルトマニン投与 / 急性低酸素細胞分画 / 加速炭素イオン線 / 中性子捕捉反応 |
研究概要 |
遠隔転移抑制効果及び休止期腫瘍細胞に対する殺細胞効果をも加味した局所腫瘍制御効果を同時に評価できるin vivo動物実験アッセイ系に関しては、ほぼ確立でき、従来のγ腺照射だけでなく、低温度温熱処置を併用した低酸素細胞毒のティラパザミン投与をγ線照射と組み合わせた際、及び、DNA依存性タンパクリン酸化酵素を抑えるウォルトマニンの分割した投与をγ線照射に組み合わせた際の、遠隔転移抑制効果及び休止期腫瘍細胞に対する殺細胞効果を加味した局所腫瘍制御効果が解析された。低温度温熱処置とティラパザミン投与を併用した際には、連続的ティラパザミン投与に低温度温熱処置を組み合わせると、遠隔転移抑制効果及び休止期腫瘍細胞に対する殺細胞効果を加味した局所腫瘍制御効果が最も高かった。分割ウォルトマニン投与をγ線照射に組み合わせた際には、局所腫瘍内の急性低酸素細胞分画が解除され効率的に酸素化され、その結果、局所腫瘍からの肺への遠隔転移能も抑えられることが判明した。 局所腫瘍内の休止期腫瘍細胞分画内のさらに酸素化された分画のγ線照射に対する感受性を選択的に検出する手法を確立した。この細胞分画の感受性といわゆる癌幹細胞との類似性を検討したところ、休止性、DNA損傷からの回復能の高さ、の2点では共通性が認めらたが、低酸素環境に存在するという癌幹細胞の特性には合致しなかった。これらの感受性の変化は高線エネルギー付与放射線の加速炭素イオン線ビームの照射で効率よく抑えられた。また、硼素-10化合物、特にL-para-boronophenylalanin-10B (BPA)を用いた中性子捕捉反応では、休止期腫瘍細胞分画内のさらに酸素化された分画の感受性を効率よく高めた。さらに、γ線照射直後にウォルトマニンを投与すると、休止期腫瘍細胞分画内のさらに酸素化された分画のDNA損傷からの回復を非常に効率よく抑えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、新規の化合物の開発はなかったものの、遠隔転移抑制効果と局所腫瘍制御効果の同時評価、及び、局所腫瘍内の休止期腫瘍細胞分画内のさらに酸素化された分画の感受性の検出に関しては、ほぼ順調に施行する事ができた。
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今後の研究の推進方策 |
特性上、癌幹細胞との類似性が認められた局所腫瘍内の休止期腫瘍細胞分画内のさらに酸素化された分画の感受性の検出に関しては、さらに他の処置による影響を加味させた解析を加える予定であり、さらに、中性子捕捉化合物の投与を前提とする中性子捕捉反応に関しても中性子捕捉化合物の特性に基づいたさらなる解析を行う予定である。また、新規の化合物の開発がある場合には、遠隔転移抑制効果と局所腫瘍制御効果の同時評価を行いたいと考えている。
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