研究課題/領域番号 |
23300349
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研究機関 | 愛知県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
青木 正博 愛知県がんセンター(研究所), 分子病態学部, 部長 (60362464)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 大腸がん / リン酸化 / 遺伝子改変マウス / 14-3-3 |
研究概要 |
1. PLEKHG1の腸管腫瘍形成における役割 Plekhg1のホモ接合変異とApcのヘテロ接合変異を併せ持つPlekhg1-/- Apc+/Δ716マウスでは、コントロールのApc+/Δ716マウス(家族性大腸腺腫症のマウスモデル)と比較して、大腸に発症するポリープの数が多くそのサイズも大きいことが分かっていたが、本年度の解析によりPlekhg1-/- Apc+/Δ716マウスの大腸遠位部ではdysplasticな変化が認められ、Apc+/Δ716マウスと比べて多くの微小腺腫が発生していることが分かった。 2. PLEKHG1の機能解析 ヒト大腸がん細胞株DLD-1、およびマウス大腸がん細胞株colon26にTet-On発現誘導システムによってPLEKHG1を誘導的に発現させる系を作製し、マトリックス浸潤アッセイを行ったところ、いずれの大腸がん細胞においてもdoxycyclineによるPLEKHG1の発現誘導が浸潤能を顕著に増強させることが分かった。 3.PLEKHG1結合タンパク 前年度までに、PLEKHG1と14-3-3とがPLEKHG1のSer 611のリン酸化依存的に結合すること、PLEKHG1はこのリン酸化Akt基質抗体によって認識されることを明らかにしていた。本年度は、この部位を標的としたリン酸化抗体を作製した。HEK293細胞に強制発現させたPLEKHG1はこの抗体によって認識されたが、Ser611をアラニンに置換した変異型PLEKHG1は認識されなかったことから、Ser611がリン酸化されたPLEKHG1に対する抗体が作製できたことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスの飼育環境も整い、Plekhg1とApcの複合変異マウスの解析が進展し、Plekhg1の欠損によってApc変異マウスの大腸における腫瘍形成が促進することがさらに強く示唆されたPLEKHG1のSer611特異的なリン酸化抗体の作製に成功した。また、PLEKHG1を誘導的に発現する大腸がん細胞株を用いた実験から、PLEKHG1が大腸がんの浸潤能を正に制御する可能性が新たに示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子改変マウスを用いた解析をさらに推進し、Apc変異マウスの大腸腫瘍形成におけるPlekhg1の役割を解明する。また、HCT116大腸がん細胞株でPLEKHG1をノックダウンすると細胞増殖能が亢進することが分かっているので、この系を用いてPLEKHG1による大腸腫瘍細胞の増殖抑制機序を明らかにし、遺伝子改変マウスの解析との整合性を検証する。また、Ser611特異的なリン酸化抗体とSer611残基の変異株を用いて、リン酸化がPLEKHG1の局在や機能に与える影響を調べる。PLEKHG1高発現による大腸がん細胞の浸潤能の亢進については、RhoGEF活性の必要性を調べ、さらに移植実験によりin vivoでの検証を行う。
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