1. PLEKHG1の腸管腫瘍形成における役割 Plekhg1のホモ接合変異とApcのヘテロ接合変異を併せ持つPlekhg1-/- Apc+/Δ716マウスでは、Apc+/Δ716マウスと比較して、大腸に発症する直径3 mm以上の大きなポリープの数が有意に多かった。腸管においてPlekhg1を発現する細胞種を同定するため、in situ hybridizationを行ったところ、正常腸管組織では主として腸上皮細胞に発現が認められ、Apc+/Δ716マウスのポリープでは正常部位に比較して発現レベルが高く、やはり主に腫瘍上皮細胞に強く発現していた。 2. PLEKHG1の機能解析 我々は最近、ヒト大腸がん細胞株HT29とDLD-1にEGF/basic EGFを用いて上皮間葉転換(EMT)を誘導できること、EMT誘導に伴ってCDX2の発現が顕著に低下することを見出し報告した。大腸がん細胞におけるCDX2とPLEKHG1の発現の相関について検討するため、EMT誘導前後でのPLEKH1の発現を定量的RT-PCRによって調べたところ、予想に反してその発現はEMTに伴って顕著に増加した。前年度までに、ヒト大腸がん細胞株DLD-1およびマウス大腸がん細胞株colon26にPLEKHG1を誘導的に発現させるとマトリックスへの浸潤能が顕著に亢進する結果を得ていたことと考え合わせると、PLEKHG1が、大腸がんの浸潤・転移をむしろ正に制御する可能性が示唆された。 3.PLEKHG1結合タンパク 前年度までに、PLEKHG1と14-3-3とがPLEKHG1のSer 611のリン酸化依存的に結合することを示し、この部位を標的としたリン酸化抗体を作製していた。本年度は、この抗体を用いて、血清刺激によってPLEKHG1のSer611のリン酸化が亢進することを見出した。
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