研究課題/領域番号 |
23300351
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
宮崎 香 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 教授 (70112068)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | EMT / TGF-β / ラミニン / 細胞接着 / 浮遊性増殖 / 浸潤モデル / 微小管 / コラーゲンマトリックス |
研究概要 |
基底膜から間質へと浸潤するがん細胞、および完全に接着能を失った浮遊性がん細胞に焦点をあてて、がんの悪性進展に伴う細胞接着システムの異常の機構を調べた。 (1)昨年度までに、ラミニン332(Lm332)の限定分解によるLm332マトリックス(ECM)形成能の消失、接着能低下、および運動能亢進が起こること、また、TGF-βで上皮―間葉移行(EMT)を誘導することにより、がん細胞による細胞接着性ECMの産生や運動性が変化することを明らかにした。今回、より生体に近いがん浸潤モデルとして、三次元コラーゲンゲル内でのEMT誘導がん細胞の挙動を調べた結果、通常の単層培養系とは全く異なり、EMT誘導がん細胞が微小管主体の大きな浸潤姓突起を形成すること、EMT誘導によりがん細胞の増殖能が抑制されることなどを明らかにした。これらの結果から、間質でのがん細胞の浸潤には間質型コラーゲンとの相互作用による微小管主体の浸潤姓突起の形成が特に重要と考えられる。 (2)浮遊性ヒト大腸がん細胞Colo201をチロシンキナーゼ(JAK)阻害剤で処理すると、短時間で細胞は上皮様の接着形態を回復することを既に明らかにした。この阻害剤を用いてColo201細胞の浮遊化の機構をさらに調べた結果、阻害剤処理によってパキシリンとp130Casのチロシンリン酸化が大きく亢進することから、Colo201細胞においてはこれらの分子のリン酸化の抑制により浮遊化することが判明した。さらに種々の細胞骨格調節因子に対するsiRNAを用いた実験から、JAK が阻害剤の標的ではなく、タンパク質脱リン酸化酵素活性の亢進が浮遊化にとって重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EMT誘導されたがん細胞が三次元環境下で示す新規な形質変化を明らかにし、論文を発表した。浮遊性がん細胞Colo201の浮遊化機構についてはパキシリンのリン酸化レベルと脱リン酸化酵素の重要性が明らかになったが、阻害剤の標的酵素が未解明である。
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今後の研究の推進方策 |
EMT誘導されたがん細胞が三次元環境下で浸潤するために必要な因子、またそのような細胞が過剰産生するラミニンγ2鎖の役割を明らかにする。悪性進展したがん細胞の浮遊化機構については、阻害剤の標的酵素と脱リン酸化酵素の関係を明らかにする。
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