研究課題
がん細胞の悪性進展に伴い、一部の細胞は接着性を低下させる一方で、高い浸潤能を獲得する。本研究ではこれまで、がんの浸潤能獲得過程における細胞接着分子の作用を明らかにしてきた。本年度は、より生体により近いがん浸潤モデルとして三次元コラーゲンゲル共培養系を構築し、がん細胞の浸潤を調節する細胞外分子の作用を解析した。また、これまでの研究を継続し、がん浸潤マーカー分子であるラミニンγ2鎖の新規作用を調べた。(1)がん浸潤モデルとして膵がん細胞Panc-1または肺がん細胞A549と正常線維芽細胞の三次元コラーゲンゲル共培養系を構築し、がん浸潤を調節する因子を調べた。コラーゲンゲル上のがん細胞は単独では殆どゲル内に浸潤しないが、ゲル内に線維芽細胞が存在すると著しく浸潤した。線維芽細胞が産生するがん浸潤促進因子として肝細胞増殖因子(HGF)を同定した。がんの悪性化因子であるTGF-β自体はがん細胞の浸潤を促進したが、意外なことに、TGF-β阻害剤は共培養系でのがん浸潤を強く促進した。この現象は、TGF-β阻害剤が、がん細胞由来のTGF-βのHGF産生抑制作用を阻止することによって起きることが判明した。この結果は、TGF-β阻害剤の抗がん剤としての臨床応用において、逆にがんの悪性化が生じる可能性を示唆する。(2)ラミニンγ2は基底膜の重要な接着分子であるラミニン332のサブユニットの一つである。ラミニンγ2は多くのがんの浸潤先進部位で高発現する。本研究では、ラミニンγ2が、がん幹細胞の重要なマーカー分子であるCD44に直接結合し、がん細胞の移動を促進することを初めて明らかにした。この結果は、ラミニンγ2がCD44と協調的にがん幹細胞の機能維持に関与する可能性を示唆する。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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