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2012 年度 実績報告書

細胞老化による発癌促進機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23300352
研究機関公益財団法人がん研究会

研究代表者

原 英二  公益財団法人がん研究会, がん研究所がん生物部, 部長 (80263268)

研究期間 (年度) 2011-04-01 – 2014-03-31
キーワード細胞老化 / 活性酸素種 / 発癌
研究概要

これまでの研究により、細胞老化を起こした細胞(老化細胞)では細胞内の活性酸素種(ROS)レベルが著しく上昇するために、DNA損傷が起こり、発癌に必要な遺伝子異常が起こりやすくなることを見出してきた。そこで本年度は、細胞老化が起こると何故ROSレベルが著しく上昇するのかにについて、その分子メカニズムの解明を試み、以下の研究結果を得た。
(1) ホルモン投与によりp16を活性化できるヒト正常繊維芽細胞を樹立し、この細胞を用いて、ホルモン投与により簡単に細胞老化を誘導できることを確認した。さらにこの細胞を用いて、細胞老化の誘導に伴いROSレベルが上昇するメカニズムの解析を行い、細胞増殖シグナル伝達因子であるAKTと細胞周期制御因子として知られるE2Fの相互作用が重要な役割を果たしていることを見出した。
(2) 更に細胞老化の誘導に伴い、AKTにより活性が変化する転写制御因子群を見出し、、それらの中にはROSの産生を抑制する転写因子(JFCR311)が含まれれていることを見出した。
(3) 一方、細胞老化の誘導過程でp16によりE2Fの転写活性が著しく低下することが知られているが、増殖中の細胞においてはE2FがJFCR311と機能および構造が類似した別の転写因子(JFCR312)の発現を促進することでROSの産生を抑制していることを明らかにした。
以上の研究結果から、細胞老化の誘導過程でAKTシグナルの活性化に伴うJFCR311の機能低下とE2Fの活性低下に伴うJFCR312の発現低下によりROSの産生を抑制する機能が破たんするために細胞内のROSレベルが著しく上昇するようになることが強く示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

細胞老化に伴う発癌促進機構の重要な要素の一つと考えられるROSの産生メカニズムの一端を明らかにすることができたため。

今後の研究の推進方策

これまで明らかにした細胞老化に伴うROS産生機構とそれに伴う染色体不安定性誘発機構について、(1) 先ずそれらの分子機構が培養細胞だけでなく、生体内でも起こっている現象かどうかについて、実験動物(病態モデルマウス)やヒトの臨床サンプルを用いた解析により明らかにしてゆく。(2)次にこれらの分子機構を調節する方法を開発するために、化合物ライブラリーやshRNAライブラリーを用いた解析を行い、細胞老化に伴うROSレベルの上昇を抑制する分子標的の探索を行う。
また、もう一つの細胞老化に伴う発癌促進機構として考えられるSASP(Senescence associated secretory phenotype)のROS産生に及ぼす盈虚についても多角的に検討することで、細胞老化に伴う発癌促進機構の解明とその調節方法の開発を目指す。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件)

  • [雑誌論文] Protein kinase A determines timing of early differentiation through epigenetic regulation with G9a2012

    • 著者名/発表者名
      Yamamizu, K., Fujihara, M., Tachibana, M., Katayama, S., Takahashi, A., Hara, E., Imai, H., Shinkai, Y., and Yamashita, J. K
    • 雑誌名

      Cell Stem Cell

      巻: 10 ページ: 759-770

  • [雑誌論文] Development of mice without Cip/Kip CDK inhibitors2012

    • 著者名/発表者名
      Tateishi, Y.
    • 雑誌名

      Biochem. Biophysi. Res. Commun.

      巻: 427 ページ: 285-292

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2012.09.041.

    • 査読あり
  • [学会発表] The roles of cellular senescence in cancer and aging2012

    • 著者名/発表者名
      原 英二
    • 学会等名
      日本分子生物学会
    • 発表場所
      福岡市
    • 年月日
      20121211-20121214
    • 招待講演
  • [学会発表] 細胞老化とがん2012

    • 著者名/発表者名
      原 英二
    • 学会等名
      日本女性医学会
    • 発表場所
      山形市
    • 年月日
      20121013-20121014
    • 招待講演
  • [学会発表] DNA damage signalling triggers degradation of G9a and GLP through APC/CCdh1 in senescent cells.2012

    • 著者名/発表者名
      Takahashi, A.
    • 学会等名
      Cold Spring Habor meeting, Epigenetics &Chromatin
    • 発表場所
      Cold Spring Harbor, (アメリカ合衆国)
    • 年月日
      20120911-20120915
  • [学会発表] Cellular senescence: a double-edged sword in the fight against cancer.2012

    • 著者名/発表者名
      Hara, E.
    • 学会等名
      International Symposium on Clinical & Translational Cancer Research
    • 発表場所
      高雄市 (台湾)
    • 年月日
      20120517-20130518
    • 招待講演

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公開日: 2014-07-24  

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