研究課題/領域番号 |
23300353
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研究機関 | 独立行政法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
堺 隆一 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (40215603)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 神経芽腫 / ALK / チロシンキナーゼ / エンドサイトーシス / 蛋白質リン酸化 |
研究概要 |
TNB-1細胞を用いて、Anaplastic lymphoma kinase (ALK)のFLAGタグ付きの野生型およびF1174LとK1062M変異体を発現させた細胞株を2ライン樹立した。M2-アガロースによってFLAGタグの着いた蛋白質をプルダウンして、野生型及び変異型ALKに結合する蛋白質を抗リン酸化チロシン抗体により精製後、質量分析により同定を進めたところShcC、IRS-1/2、SOS1/2、PI3K、ZO-1/2など他のALK活性化腫瘍で既知のALK結合分子群に加え、新たにCortactin、Drebrinなどのアクチン結合蛋白質、Flotillin-1やSH2Bなど蛋白質安定性や局在を制御する分子を見つけ、機能解析を開始した。そのうちALKの阻害剤によってチロシンリン酸化が阻害されることが確認できたFlotillin-1 (FLOT1)、SH2B、SHP2の3つの分子について先行して解析を進めた。FLOT1は細胞膜上のラフトに局在し、エンドサイトーシスに関わることが知られていたため、ALK蛋白質の分解に関わる可能性を考えた。蛍光染色でFLOT1はラフトおよびエンドソームと考えられる細胞質内の顆粒においてALKとの共局在が認められた。神経芽腫細胞においてFLOT1の発現をRNAiで抑制すると膜上のALK蛋白質の量が著明に増加し、同時に細胞の運動能・浸潤能が上昇した。また実際、神経芽腫におけるFLOT1の低発現群では高発現群に比べ有意に予後が悪いことが示された。神経芽腫で見られるALKの変異のうちF1174Lなど幾つかにおいて、変異型ALKとFLOT1との結合能が野生型に比べ著明に減少しているのが確認され、このような変異によりALK蛋白質の安定性が増すことでがん化シグナルの活性化につながっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
質量分析で同定されたALK結合蛋白質のうちFlotillin1 (FLOT1)、SH2B、SHP2などについて機能解析を進め、特にFLOT1に関してはRNAiおよびイメージングの系を用いて神経芽腫における局在や機能についての解析を重点的に行い、ALK蛋白質のエンドサイトーシスを介した神経芽腫の悪性化との関わりを明らかにすることができた。FLOT1の発現が低い神経芽腫においては、ALK蛋白質の分解抑制が悪性化に関わる可能性があり、このような症例にALK阻害剤による治療の適用の範囲が広がる可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
マウスによるin vivoのモデルを用いて、FLOT1によるALKの分解の程度が神経芽腫の造腫瘍能、転移能に与える影響を解析する。変異ALKおよび野生型ALKに対する結合能の差の解析を行い、またヒト神経芽腫の検体におけるこれらの蛋白質の発現量と予後との関係について解析をすすめる。現在解析中のSH2B、SHP2などのALK結合分子に関しても、神経芽腫の発生、進展における役割を明らかにしていく。
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