研究課題
現在種々のがん免疫療法の臨床試験が行われているが、動物実験の結果から期待されたような臨床効果は限定的に観察されるのみである。その原因として、抗腫瘍免疫応答を負に制御しているCD4+制御性T細胞(Tregs)による免疫抑制があげられる。本研究では、腫瘍局所でのTregsによる抗腫瘍免疫応答の抑制を詳細に解析し、これをコントロールすることで抗腫瘍免疫応答を効果的に誘導するための基礎検討を行った。悪性腫瘍組織(悪性黒色腫、食道癌、肝臓癌)および末梢血より単核球を分離し、腫瘍局所に浸潤しているT細胞のフェノタイプを検討した。腫瘍局所には末梢血と比較しCD4+Tregsが多数浸潤しており、それらのCD4+Tregsのほとんどがエフェクター型フェノタイプを示した。一方で末梢血のCD4+Tregsはエフェクター型とナイーブ型が混在しており、腫瘍局所と末梢血で大きな差があることが明らかとなった。このことからエフェクター型CD4+Tregsに特異的に発現している分子を検索したところ、エフェクター型CD4+Tregsでは、ナイーブ型CD4+Tregsおよび他のCD4+T細胞に比較してCCR4が有意に高発現していることが示された。よってCCR4を標的とすることで腫瘍局所に多数局在するエフェクターCD4+Tregのみを除去可能であると考えられ、今後のがん免疫療法への応用の可能性が示唆された。一方、腫瘍局所のエフェクターCD8+T細胞を検討したところ、CD4+Tregs浸潤比がCD8+T細胞の疲弊マーカー(PD-1、Tim3、Lag3等)の発現と相関していることが明らかとなった。CD4+Tregsの抑制メカニズムの可能性として意義深い知見と考えられた。
2: おおむね順調に進展している
研究の目的にむけて初年度ですでにCD4+Tregをコントロールするための候補分子の一つが同定され、またCD4+TregとエフェクターCD8+T細胞の解析からも重要な抑制メカニズムと考えられる知見を得ていることから、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
平成23年度に腫瘍局所に浸潤しているCD4+Tregのフェノタイプを明らかにしたが、さらに詳細なフェノタイプ解析を行い、より腫瘍浸潤CD4+Treg特異的な分子発現を解明し、CD4+Tregコントロールの基盤を強固なものとする。また、CD4+Tregの抑制メカニズムの解明に関してもCD8+T細胞の疲弊マーカーとの関連という足がかりをつかんでおり、これを中心に研究を推進する。
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