研究課題/領域番号 |
23300354
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西川 博嘉 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任准教授 (10444431)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 抗腫瘍免疫応答 / CD4+制御性T細胞 / エフェクターT細胞 |
研究概要 |
ヒトのCD4+制御性T細胞(Tregs)がナイーブ型(CD4+CD45RA+FOXP3Low)とエフェクター型(CD4+CD45RA-FOXP3high)の2分画に分かれ、なかでも、エフェクター型制御性T細胞で抑制活性が強いことが報告されている。昨年までに悪性腫瘍局所にはエフェクターTregsが優位に浸潤しており、それらのエフェクターTregsがCCR4を強発現していることを明らかにしてきた。平成24年度は、抗CCR4抗体によりエフェクターTregsの選択的な除去の可能性、およびそれによるがん抗原特異的CD4+およびCD8+T細胞の効果的な活性化の可能性を検討した。健常人及びがん患者検体を用いて抗CCR4抗体によりどの細胞分画が影響を受けるか、また処理細胞からががん抗原特異的T細胞誘導が可能かを検討した。抗CCR4抗体処理により、健常人および悪性腫瘍患者末梢血からエフェクターTregsが選択的に除去された。CD8+T細胞、NK細胞および他のCD4+T細胞等への影響は限定的であった。また、がん抗原NY-ESO-1に焦点を当てて、これらのCCR4陽性細胞を除去した細胞から、NY-ESO-1特異的CD4+T細胞を活性化・誘導可能かを健常人および悪性腫瘍患者で検討した。CCR4陽性細胞を除去しない細胞では誘導されなかったNY-ESO-1特異的CD4+T細胞が、CCR4陽性細胞除去により活性化・誘導されることを明らかにした。さらにCD8+T細胞についても検討したところ同様にCCR4陽性細胞を除去することにより誘導が増強した。 また、腫瘍局所のCD8+T細胞とTregsとの関連を検討し、Tregs浸潤頻度と疲弊マーカーが相関するとともにTregの除去によりこれらの疲弊マーカーの発現が改善することを動物モデルで明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的にむけて初年度同定した候補分子を標的として抗体による処理を行うことで、がん局所に存在していることを明らかにしたエフェクター制御性T細胞が除去され、ヒト末梢血からがん抗原特異的CD4+およびCD8+T細胞応答が効果的に誘導されることを示している。またCD4+Tregの腫瘍抗原特異的エフェクターCD8+T細胞に対する新規の抑制メカニズムと考えられる知見を得ていることから、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
末梢血を用いて明らかにした抗CCR4抗体によるエフェクター型Tregs除去によるがん抗原特異的CD4+およびCD8+T細胞誘導をがん局所および局所の所属リンパ節の細胞へと展開し、がん局所での免疫抑制解除が本当に実現しているのかを明らかにしていく。一方でTregs存在によるCD8+T細胞の疲弊(マーカーおよび機能)の増強というデータも得ており、これらのマーカーへの影響も明らかにする。 また、動物モデルを用いて腫瘍局所を標的としたTregsの除去によりエフェクターT細胞の増強がin vivoでも誘導可能か、さらにそれらのエフェクターT細胞は新たにリンパ節等から供給されるのか、もしくは腫瘍内に存在するT細胞がTreg除去により再度エフェクター機能を回復するのかを明らかにし、効果的ながん免疫療法療法の開発につなげる。
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