研究課題/領域番号 |
23300356
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
隅田 泰生 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (70179282)
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研究分担者 |
若尾 雅広 鹿児島大学, 理工学研究科, 助教 (20404535)
有馬 直道 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30175997)
伊東 祐二 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (60223195)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 腫瘍マーカー / オーダーメード治療 |
研究概要 |
成人T細胞白血病 (ATL) は、ヒトT 細胞白血病ウイルス1 型 (HTLV-1) が原因で発病する白血病で、日本においては鹿児島県、沖縄県などの南九州を中心に感染者が多い。日本全国にHTLV-1キャリアは約120 万人、ATLの発症率は3~5 %、毎年約1000人が死亡している。ATLは一度発症するときわめて予後の悪い白血病であり、発症後の生存率は極めて低い。本研究ではATL 細胞表層の糖鎖に着目し、その糖鎖に特異的に結合する一本鎖抗体 (scFv) を調製し、ATL に対するマーカーおよび新規抗がん剤の開発を行うことを目的とした。 ATL患者から樹立したS1T細胞の表層からO型糖鎖を切り出し、BlotGlyco 法によって捕捉、独自開発の蛍光性リンカーで糖鎖を修飾した。3つのフラクションに分画し、各フラクションを、先端を金ナノ粒子で表面修飾した光ファイバーに固定化して、ファイバー型シュガーチップを調製した。このチップを用いて、ヒトB細胞由来のナイーブscFvファージライブラリーからファージのスクリーニング(バイオパニング)を行い、非ATL白血病細胞であるMOLT4 細胞に結合せず、S1T 細胞に強く結合する1クローンのscFvを得た。このscFvは、ATL細胞(MT2、 K3T、 su9T01)に高い結合性があり、非ATL細胞(HL60、 CEM、 Jurkat)では、ほとんど結合性がない、または低かったことから、ATLに優先的に結合していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由:ファージライブラリーを従来用いていた合成ライブラリーから、健常人の末梢血B細胞から作成したライブラリーに変更したところ、安定性の高いscFvを効率よく得られるようになった。単離精製したscFvは、ATL系の培養細胞に優先的に結合し、非ATL系の白血病細胞由来の培養細胞にはほとんど結合しなかった。しかし、成熟したヒト末梢血PBMCには結合がみられたこと、また単離できたクローンは1つだけであったことから、下述するような工夫を平成25年度は行う。糖鎖の解析は、シュガーチップとコンピューターモデリングを用いて行うことができるようになり、またscFvを固定化した蛍光性ナノ粒子やカーボンナノ粒子の調製法も平成24年度に確立できた。
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今後の研究の推進方策 |
上述の問題を解決するために、ヒトB細胞由来のファージライブラリーをまず、健常人PBMCの糖鎖を固定化したチップを用いてネガティブセレクションし、それらに結合しなかったファージをまず選別し、その後確立した方法でscFvを単離する。糖鎖解析や、検査プローブの開発なども行い、最終年度には当初期待した通りの成果を出せるものと考えている。
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