研究概要 |
本研究はDNA修復経路における合成致死性を利用した治療を開発するために、DNA損傷性薬剤に対してそれを補完する因子の機能不全を同定することを目的としている。 平成24年度は平成23年度より行っていた相同組換え修復遺伝子のメチル化解析を、症例を追加して検討した。Epirubicinを含む術前化学療法を施行した原発性乳癌のうち、Luminal乳癌の病理学的完全奏功(pCR)および非奏功例、Triple negative(TN)乳癌のpCRおよび非奏功例、各15症例(計60症例)の癌部分におけるBRCA1, BRCA2, BARD1, MDC1, RNF8, RNF168, UBC13, ABRA1, PALB2, RAD50, RAD51, RAD51C, MRE11, NBS1, CtIP および ATM遺伝子プロモーターのメチル化をBisulfite-pyrosequence法にて解析した。その結果、BRCA1とRNF8のメチル化はTN乳癌に有意に高頻度に認められた。治療効果との関係ではTN乳癌においてBRCA1のメチル化はpCR症例に高頻度に認められる傾向にあった。一方、RNF8とATMのメチル化は非奏功例に有意に高頻度に認められた。 BRCA1のユビキチンリガーゼ(E3)活性が欠損するとCPT11およびPARP阻害剤によるDNA損傷時にChk1のリン酸化が起こらず、DNA相同組換えが阻害される。そのメカニズムとしてBRCA1によるClaspinのユビキチン化によってClaspinがクロマチンに誘導されることが必須であることがわかった。 PLK1高発現癌細胞においてBRCA1のE3活性が抑制されているために、CPT11とPARP阻害剤に対する感受性が亢進しているという平成23年度の知見にもとづき、マウスにおけるin vivoでの実験を行い、これを裏付ける結果が得られた。
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