研究課題
がん抑制的に機能するmiRNAの解析を通じて、細胞周期の制御さらには、細胞死の制御機構を理解し、発がん抑制バリアーの分子ネットワークを明らかにすることを目的として、本研究課題を遂行した。本年度は、ヒトのがんで高頻度に変異を有するがん抑制遺伝子p53の経路とがん抑制的miRNAとの関連を解析した。miR-22は、p53が野生型の細胞には細胞死を誘導し、変異型のがん細胞には、細部周期停止を誘導する。miR-22はp53の標的遺伝子でもあり、p53の変異ステータスによって、誘導する表現型が異なる。そこで、miR-22をスクリーニングツールとして利用し、p53変異型がん細胞の細胞周期亢進に必須の因子の同定を試みた。その結果、NEK9キナーゼを同定した。NEK9をsiRNAでノックダウンすると、p53変異型がん細胞株の増殖は顕著に抑制されるが、野生型を有するがん細胞の増殖には、影響を与えなかった。また、p53の変異タイプによって、細胞増殖抑制機能は影響を受けないことが解った。さらに、マウス移植がんにNEK9 siRNAを投与することで、p53野生型のがん細胞増殖を強く抑制することも明らかにした。NEK9とp53変異体の発現が認められる肺腺がん症例は、それ以外と比べて予後が悪く、両者の発現が、がん細胞の増殖に有利に働くことが強く示唆された(論文投稿中)。また、がん抑制的に機能するmiR-101の機能についても、解析を行い、miR-101がEG5を標的としてがん細胞の増殖を抑制することが解った。EG5は分子標的とその阻害剤の治験が行われている。miR-101によるEG5の抑制は、既存の分子標的薬の作用機序と異なることも明らかにした(論文作成中)。これらの成果から、がん抑制的miRNAの機能解析を通じて、発がん抑制バリアーのネットワークが明らかになることが期待できる。さらに、新規の分子標的候補の同定と、核酸医薬品のシーズを提案することに成功した。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Plos ONE
巻: 9 ページ: e92921
10.1371/journal.pone.0092921