研究実績の概要 |
電磁誘導加熱癌焼灼治療の実現化を目指す本研究は、下記[課題A,B,C]を統合する事で構成した。[課題A]磁性ナノ粒子のPEGブロックポリマーによる表面修飾、またそのステルス効果による腫瘍集積増。[課題B]腫瘍血管特異的透過性亢進ペプチド(iRGD)の同時投与によるナノ粒子の腫瘍集積増強。[課題C]磁性ナノ粒子の高発熱化→棒状ディンプル磁性ナノ粒子の作成。 H26は本研究で開発した磁性ナノ粒子(DINP)がJSTの支援制度に採択され、国際特許申請を果たした。癌焼灼治療用の磁性ナノ粒子は研究開始当初32W/g鉄粒子のリゾビストがベンチマークであり、発熱特性を上げる為に、材料工学的には鉄にコバルト、プラチナなどの希土類を混ぜる事が一般的であった。DINPは人体への臨床応用を視野に入れ、生体に有害な物質を一切添加せずに鉄粒子の形状を整える事(多孔性の棒)によってのみ発熱量を600W/g鉄粒子にまで上昇する事に成功した。DINPは、生体への投与経路としてa)血液内 b)腹腔、胸腔内 c)腫瘍内への穿刺注入のいずれにおいても有毒金属を含まない磁性ナノ粒子として、幅広い応用の可能性がある。DINPはその製造過程で凝集・沈殿してしまうが、[課題A]の為に導入した筑波大独自のPEGブロックポリマー(PEG-b-PVBP)で修飾する事により磁性流体として成立する事が出来た。一方、血管内にDINPを直接注入した場合のステルス化は十分でなく、粒子の腫瘍への集積は0.58mg 鉄粒子/g腫瘍のベンチマーク以上には向上できていない。また、[課題B]の腫瘍血管特異的透過性亢進ペプチド(iRGD)を同時投与する事により能動的集積効果の上乗せ効果も当初期待した5-7倍には及ばず、1.2-1.5倍程度に留まった。H26年度は、DINPを腫瘍に直接注入し、外部からの交流磁場照射で腫瘍を焼灼する方法のデータの蓄積をし、現在投稿準備中である。
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