研究課題
がん細胞は、正常細胞にみられる老化プログラムから逸脱した細胞であり、この老化プログラムを再活性化することが、がん抑制機構の重要な方法であるといわれている。細胞老化のモデルとして繊維芽細胞を用いて細胞老化で増加するマイクロRNAをアレイ解析により約20種同定した。これらの中の、miR-22は、乳癌や子宮頸がんなどの様々ながん細胞株の老化を誘導した。また、乳癌の高転移株モデルマウスでは、腫瘍抑制、転移の抑制効果を示し、in vivoでの効果も証明できた。これらの作用メカニズムの一つとして、miR-22は、SIRT1、CDK6およびSP1を標的として細胞増殖を抑制していることも、3'UTRルシフェラーゼアッセイ、ウエスタン解析などで明らかにした。また、miR-22により細胞老化誘導のメカニズムを解析する目的でcDNA array解析を行い、細胞老化で典型的な経路が活性化されていることを明らかにした。その中でも、細胞老化誘導を起こす引き金として注目されているクロマチンリモデリングに関与するエピジェネティクスな調節にmiR-22が関与している可能性を明らかにすることができた。また、他の標的分子に関しても細胞老化誘導の表現型で重要な標的因子も同定できた。miR-22が癌細胞の増殖・転移を抑制可能な癌種の検索計画においては、新たに膵がんでも効果があることをin vitroの細胞培養系で実証できた。
2: おおむね順調に進展している
miR-22のメカニズム解析において、どのようなpathwayが関与しているか網羅的に解析することに成功し、その中で研究計画において注目していたエピジェネティックな細胞老化制御のメカニズムの可能性を明らかにできた点は、成果として大きい。新たな抗腫瘍活性を示す臓器として膵がんを同定できた点も研究計画通りである。
1.miR-22のメカニズム解析として、本年度明らかにしたエピジェネティックな細胞老化制御のメカニズムに焦点をあてて、そのメカニズムの全貌を明らかにすることを目標とする。2.今後、新たに抗腫瘍効果を見いだした膵がん細胞について、in vivoを評価できるマウスモデルの構築が問題である。これらについては、主要な膵がん細胞を予備的に移植して、いくつかは実現できそうなレベルであるので、それらを用いてin vivo実験を実証する。以上、本研究によりmiR-22の細胞老化誘導メカニズムを明らかにすると同時に、in vivoでの効果も実証する。
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