研究課題
miR-22は、他の細胞老化誘導型マイクロRNAと比べて、繊維芽細胞が細胞老化を起こしたときとほぼ同様の老化関連シグナルの遺伝子パスウエイが活性化されていることを明らかにできた。その他の老化誘導マイクロRNAでは同様の活性化は見られなかったことから、miR-22は細胞老化において重要な役割を担っていることが考えられた。また、miR-22の新規標的遺伝子を幾つか明らかにすることができた。その中の一つ標的遺伝子として、ヒストンH3.3について、miR-22が直接のターゲット遺伝子であることを証明するためにH3.3の3'-UTR のクローニングおよびmiR-22が結合するシード配列に変異を入れた3'-UTRの作成を行いH3.3の3'-UTRアッセイを行った。その結果、野生型の3'-UTR でのみルシフェラーゼ活性の減少が見られた。さらに、H3.3のsiRNAは、正常細胞TIG-3において、顕著な増殖抑制が起こることを明らかにでき、miR-22の新規老化誘導メカニズムとしてヒストンH3.3が関与することを明らかにできた。本年度は、miR-22による膵がん細胞の増殖抑制効果をin vivoで確認するために、膵がんモデルマウスを作成することを目標に行った。それぞれの膵がん細胞株にルシフェラーゼ遺伝子を導入してPanc1-luc細胞、KLM1-luc細胞、PK8-luc細胞、PK9-luc細胞、CFAPC-luc細胞を作成した。これらを用いてSCIDマウスの膵臓に移植を行ったところ、約30日で十分な大きさの膵臓癌ができていることを確認できた。
2: おおむね順調に進展している
miR-22は、他の細胞老化誘導型マイクロRNAと比べて、繊維芽細胞が細胞老化を起こしたときとほぼ同様の遺伝子パスウエイが活性化されていることを明らかにできたこと。また、miR-22の標的遺伝子としてH3.3が関与していることを、H3.3の3'-UTRのクローニングと3'-UTRアッセイにより証明することができた。H3.3のsiRNAにより顕著な増殖抑制が起こることも明らかにでき、miR-22の新規誘導メカニズムとしてH3.3の関与を明らかにできており、概ね順調に進んでいると言える。また、膵がんモデルマウスを用いた抗腫瘍効果の検討については、具体的な核酸の投与はデリバリー方法を検討しているところで有り実施していないが、5つの膵がんモデルマウスを作成することに成功しており、概ね順調に進んでいると言える。
miR-22による細胞老化誘導に関与する可能性のある新規の標的遺伝子候補について細胞老化への関与について詳細に調べる。さらに、昨年度明らかにしたMiR-22の新規老化誘導メカニズムにおけるヒストンH3.3の関与について、クロマチンリモデリングへの関与の可能性およびテロメアの末端維持に寄与する可能性について検討を行う。さらに、昨年の成果として、miR-22は、他の細胞老化誘導型マイクロRNAと比べて、繊維芽細胞が細胞老化を起こしたときとほぼ同様の遺伝子パスウエイが活性化されていることが明らかになったことから、miR-22によるこれらの老化遺伝子の活性化機構についても検討を行い、miR-22による細胞老化誘導メカニズムの解明をめざす。作成した膵臓癌のモデルマウスを用いて、老化誘導マイクロRNAあるいはそのターゲット遺伝子のsiRNAを用いた抗腫瘍効果を検証する。デリバリー技術が問題となるが、幾つかのデリバリー方法を検討して、デリバリー効率の一番よい方法で最終的に抗腫瘍効果を検討する予定である。
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