研究課題
我々の開発した新規薬剤設計方法COSMOS法(Conversion to Small Molecules through Optimized-peptides Strategy)を利用し、Imatinibとの構造比較から癌遺伝子Metを標的とした新規分子標的薬のリード化合物候補を見出している。本研究では、そのリード化合物をもとにMetを標的とする優れた低分子標的薬の最適化分子設計を行い、in vitroおよびin vivoでの生物活性を確認することにより、本方法論の有効性・普遍性を検証するとともに臨床応用の可能性を探ることを目的とした。平成23年度は、Bcr-Ab1の不活性型結晶構造を鋳型としたMet不活性型のホモロジーモデリングを実施し、Met不活性型を対象としたSBVS(Structure-Based Virtual Screening)及びSBDD(Structure-Based Drug Design)による特異的阻害剤の分子設計基盤を確立した。また、ドッキングスタディの精度向上のため、Molecular Dynamics(MD)を用いて標的タンパク質に柔軟性を取り入れたMD-Sampling法を開発し、Met Tyr Kinase不活性型のホモロジーモデルに柔軟性を導入した。このような理論基盤をもとに、Met Tyr Kinase不活性型に対し特異的な阻害剤の設計を実施した。まず、Met不活性型に結合親和性の高い最適ペプチドの設計を行い、次いで、設計最適ペプチドとMet不活性型との複合体構造を用いたHot Spotの同定並びにHot Spotと低分子との結合パターンをヒット化合物の選別条件としたSBVSを実施した。以上の操作により設計した薬剤に関し、Kinase Assayによる構造予測へのフィードバックをかけ、より適正な化合物を模索した。現在、これらの候補薬剤について詳細な解析を行っている。
2: おおむね順調に進展している
初年度である平成23年度の研究計画として、Met Tyr Kinase不活性型の分子モデルの構築並びにMet Tyr Kinase特異的阻害剤の分子設計の2つのテーマを掲げたが、これらについてはほぼ予定通り行うことができた。現在、Kinase Assayにより得られたIC_<50>をもとに、構造予測へのフィードバックをかけより適正な化合物を模索しつつ、最適リード化合物の創製を図っているところであり、ほぼ予定通りの進捗状況と言える。
これまでの研究によりMet Tyr Kinase不活性型の分子モデルの構築はほぼ完了した。このモデルをもとに、昨年度に引き続きMet Tyr Kinase不活性型特異的阻害剤の分子設計を継続するとともに、活性型リコンビナントMet Tyr kinaseを構築し活性部分と候補薬剤との結合構造解析を実施する。また、出来上がった候補薬剤をもとに、阻害剤のscattering抑制効果、細胞死誘導能、及び抗腫瘍効果の確認を行う。今年度は既知のkinase阻害剤をリファレンスとして入手し、結晶構造との比較から我々の分子設計手法の有意性を検証する方向で検討している。また、低分子化合物の構造的性質をkinaseに対する結合活性から分類し、それぞれのカテゴリーにおける最適化の方法を探ることにしている。
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