研究概要 |
本研究では,史上初めて行われる本格的な塩分観測衛星ミッションであるAquariusの観測データを解析し,海面塩分の観測精度の評価と誤差の特性を調べることを目的としている.今年度は,得られた海面塩分の観測データを,係留ブイ,アルゴフロート,船舶観測,海洋データ同化モデル出力などのデータと比較することにより,観測精度の評価を行うとともに,誤差の特性を調べることにより,アルゴリズム改良に必要な情報を抽出することを試みた.その結果,現在,作成・配布されている最新のデータを用いれば,低・中緯度海域では,目標観測精度(150km,1ヶ月平均で誤差0.2psu)はほぼ達成できることが明らかになった反面,高緯度の低水温域では,十分な観測精度が得られていないことも明らかとなった.誤差の最大の要因となる海上風速・風向の補正について,Aquariusに同時搭載されるL-バンドマイクロ波散乱計の散乱断面積の風速・風向依存性を詳しく調べた.L-バンド帯の散乱計が衛星に搭載された例は非常に少なく,海面での散乱特性はまだ明らかでない点が多い.観測された散乱断面積の風速・風向依存性を,気象庁の気象解析モデル出力(JMA/GPV/GSM)と比較した.その結果,観測されたL-バンド,水平偏波の散乱断面積の入射角・風速・風向依存性は,Isoguchi and Shimada(2009)が,衛星搭載合成開口レーダALOS/PALSARで求めた値とよく一致していることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り,初期評価用の衛星観測データが入手できており,それを用いて塩分の観測精度の評価,誤差特性の抽出,散乱断面積の入射角・風速・風向依存性の検討などが,進んでいるため.
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降,本研究の成果を衛星観測データ処理・配布機関に送り,今後のアルゴリズム改良に貢献する.また,改良されたアルゴリズムで再処理されたデータについて引き続き精度評価と誤差特性の解明を行う.観測精度がある程度のレベルに達した段階で,全球水循環の研究への応用を試みる.研究計画に大きな変更はない.
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