研究概要 |
本研究では,史上初めて行われた本格的な塩分観測衛星ミッションであるAquariusの観測データを解析し,海面塩分の観測精度の評価と誤差の特性を調べることを目的とした.今年度は,昨年度に引き続き,得られた海面塩分の観測データを,係留ブイ,アルゴフロート,船舶観測,海洋データ同化モデル出力などのデータと比較することにより,観測精度の評価を行うとともに,誤差の特性を調べた.その結果,現在,作成・配布されている改良版の最新のデータを用いれば,水温 5度以上,風速 15 m/s 以下の条件では,単 一の観測で,残差の標準偏差が 0.42 psu 程度,150 km かつ1ヶ月平均で 0.23 psu 程度と,目標観測精度(150 km, 1ヶ月平均で誤差 0.2 psu)に確実に近づいていることが明らかになった.また,以前のデータで指摘されている数ヶ月~1年程度の時間スケールのドリフトは大幅に軽減されていることが示された.また,これまでのデータで,銀河等からの放射の反射の補正に問題があり,ascending/descending の軌道で有意なバイアスを持ち,かつ,それが季節変動していることも指摘されていたが,最新のデータでは,処理アルゴリズムの改良により,この差が大幅に縮小されていることを示した.衛星センサで観測された海面塩分(深さ数 cm に相当)とアルゴフロートの観測値(深さ 10 m 前後)の差を調べたところ,その全球分布や季節変動は,熱帯降水帯などの降水の分布と非常によく対応していることが分かった.この結果は,衛星観測によって得られた海面塩分のデータが,全球水循環に果たす海洋の役割を明らかにしていくために役立つ可能性を示していると考えている.
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