研究課題/領域番号 |
23310002
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 幸彦 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (80345058)
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研究分担者 |
小松 幸生 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (30371834)
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キーワード | 環境動態解析 |
研究概要 |
マイワシ(Sardinops melanostictus)とカタクチイワシ(Engraulis japonicus)は西部北太平洋温帯域表層の主要な魚種であり、日本の重要な水産資源であると同時にサバやカツオ、マグロ類等のより大型の魚種や鯨類等の主要な餌として生態系の重要な地位を占めている。本研究では、「気候変動に伴う環境変動が、仔稚魚期の生残率変動を介してマイワシ・カタクチイワシ資源量変動に及ぼす影響を明らかにする」ことを目的とし、現場観測と数値シミュレーションを組み合わせた研究を行った。 本年度は、現場観測、既取得資料の整理・分析、海洋データ同化システム・生態系モデルの3点から研究を実施した。まず、2011年4月に淡青丸KT-11-5次航海に乗船し、遠州灘~房総沖海域の環境および仔魚分布調査を行った。これと合わせ、研究代表者・分担者らがこれまでに黒潮~黒潮続流域で採集したイワシ類仔魚試料を分析し、マイワシとカタクチイワシ約20000個体を同定し、うち約1500個体の耳石径および輪紋間隔の計測を行った。その結果、2006~2011年の春季の遠州灘~房総沖海域におけるマイワシ・カタクチイワシの仔魚分布、体長・日齢・成長速度組成が明らかとなった。 また、既往資料の分析から、黒潮横断面における等密度面上の栄養塩の分布は、24.5-25.5Sqの密度面で黒潮最強流帯(黒潮流軸)の濃度が沿岸側(内側域)および沖合側(外側域)に比べて大きく湾流域のNutrient Streamの構造に類似した特徴ある構造を持つことを検出した。なお、この構造は春季のみ確認され、他の季節は、沿岸側で最も高く、流軸から沖合側に向けて濃度が低くなる分布を示した。 海洋データ同化システム・生態系モデルに関しては、FRA-JCOPEの再解析データについて、1993年1月~2010年12月のデータを整理し、次年度予定している粒子輸送実験と環境変動解析のための基盤となるデータセットを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
春季の遠州灘~房総沖海域における物理・低次生産環境、およびイワシ類仔魚分布のデータを蓄積し、分析が順調に進行している。また、同化システムデータの整理により、粒子輸送実験と環境変動解析のための基盤となるデータセットの構築を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度までは引き続き観測データの取得、既往データの解析、モデルデータセットの整備を行う。H24年度からH25年度にかけて、分析データと数値シミュレーションデータを合わせ、仔魚の詳細な輸送環境、経験環境変動を明らかにし、成長・生残変動を介した資源量変動機構の解明につなげる。
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