研究課題
本研究は、南極海表層水の低塩分化が底層水塊の変質に及ぼす影響を評価するための基礎研究で、4年間にわたり東京海洋大学練習研究船海鷹丸により南極海での観測を実施してきた。最終年度である今年度は、(1)観測の継続により南極底層水変遷の動向をモニタリングしつつ、(2)これまでの観測記録を総合して解析・考察した。(1)海鷹丸による南極海観測は、2015年1月11日から2月5日に実施された。これまでの3年間に比べ今年度の観測期間では、海氷が厚く広がっていたため観測に多くの制約を受けたが、南極底層水の分布と水塊変質のモニタリングの観測に関しては、ほぼ予定通り実施できた。その結果、近年の低塩化の傾向がわずかに進んでいる様子、陸棚水起源と考えられる低塩分水が2000mから3000m深に幾層にもわたって貫入している様子、などが捉えられた。(2)これまでに本研究課題で取得した係留データおよびCTDデータ、乱流実測データに加え、過去に他の研究機関が取得したデータを合わせて解析した。ビンセネス湾ポリニヤを起源とした南極底層水(VBBW)の特性の変化について調べた。その結果、低塩化傾向は引き続き進行しており、2012年以降2014年に観測された昇温傾向は2015年では収まっていることが分かった。これが一時的な応答かどうかを判定するには、今後も引き続き監視する必要がある。一方、オーストラリア南極海盆の南極大陸側の広域で1996年1~3月に実施された観測(BROKE)記録を用い、本課題で発見したVBBWの海盆内底層水へのインパクトを調べた結果、VBBWの影響は、2500~3000m深に顕著で、水平に数百㎞のスケールに及んでいることが分かった。また、ケープダンレー沖陸棚端での乱流観測記録の解析から、夏季でもスロープカレントにより形成される海底境界層を通じ、南極底層水が生成へされるプロセスがあることが示された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Geophysical Research
巻: 120 ページ: 910-922
10.1002/2014JC010059
Geophysical Research Letter
巻: 41 ページ: 3528-3534
10.1002/2014GL059971