研究課題/領域番号 |
23310004
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
長田 和雄 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (80252295)
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研究分担者 |
定永 靖宗 大阪府立大学, 工学研究科, 助教 (70391109)
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キーワード | 環境分析 / 環境変動 / 環境質定量化・予測 / アンモニア態窒素 |
研究概要 |
大気中のアンモニア態窒素は、ガス態での大気化学的・生態学的な影響の他、粒子態として存在することによる気候への影響など、様々な環境影響をもたらす。近年、中国など東アジアからのアンモニア排出量が増加しており、日本など風下域への影響が懸念されているが、大気中でのアンモニア態窒素の動態については不明な点が多い。そこで、越境汚染時のアンモニア態窒素濃度の気相-固相の分配状態を、日本国内からの汚染を受けにくい場所で観測し、変動要因について検討する。 初年度には、上記目的に合致する石川県羽咋市千里浜の国民休暇村にて観測をおこなった。平成23年12月に予備観測、平成24年2月下旬~3月中旬にかけて本観測の1回目をおこなった。観測項目は、ガス態・粒子態のアンモニア態窒素、硝酸ガスを含む酸性ガスと粒子態イオン成分、SO_2、CO、気象要素(温度、湿度、風向、風速、雨量)、CPC/OPCによるエアロゾル粒子個数粒径分布、PM2.5濃度などである。 3月の観測では、偏西風が卓越する時期で、かつ、中国でのアンモニア排出量が増加し始める時期を狙った。その結果、様相の異なる2回の吹き出しを観測できた。どちらもアンモニア濃度は1ppbv以下とごく低く、大気中では大半が粒子態のアンモニウム塩として存在していた。また、アンモニア濃度は、名古屋など都市域での値の数分の1~1/10であった(長田)。 能登半島珠洲において全硝酸を通年観測し、その季節変動を調べたところ、大陸由来の気塊が卓越する春季に高濃度であった。しかしながら、大陸由来の気塊が少ない夏季に最小とはならず、大陸由来の気塊の飛来が春季と同様に多い冬季が最も低濃度であった。これは夏季には日本からの影響を強く受けること、冬季の日本海側は降水量が多いため、全硝酸の一部が湿性沈着されてしまうことなどが理由として考えられる(定永)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
観測の準備を整え、目的に合致した適地にて観測をおこない、狙いの時期に観測データを得ることができたので、概ね順調に進展したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、当初の予定通り、中国でのアンモニア排出量が高く、しかも西風頻度の高い5~6月に羽咋で観測をおこなう。H23年度の観測が順調であったので、この観測も概ね順調に推移すると予想される。野外観測の後、得られた大量のガス・エアロゾルサンプルの分析をおこない、総合的な解析を進めたい。 羽咋で観測される西~北風は、中国-ロシア方面からの空気塊を観測するには適しているが、韓国の影響も受ける可能性がある。より中国に近く、韓国の影響を受けにくい場所での観測結果との比較が有用かもしれない。そのためには、西日本地域での観測適地を探し、そこでの観測を秋~冬におこなうことも検討する予定である。
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