研究課題/領域番号 |
23310004
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
長田 和雄 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (80252295)
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研究分担者 |
定永 靖宗 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70391109)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | アンモニア態窒素 / 環境分析 / 環境変動 / 越境汚染 / 環境質定量化・予測 |
研究概要 |
2年次も初年度に引き続き、石川県羽咋市千里浜の国民休暇村にて、2週間の集中観測を5月と11月におこなった。観測項目は、ガス態・粒子態のアンモニア態窒素、硝酸ガスを含む酸性ガスと粒子態イオン成分、SO2、CO、気象要素(温度、湿度、風向、風速、雨量)、CPC/OPCによるエアロゾル粒子個数粒径分布、PM2.5濃度などである。また、越境汚染と国内都市大気とを比較するために、ほぼ同じ観測項目で、名古屋で3週間の集中観測を6月と12月におこなった。 羽咋での5月の観測では、中国でのアンモニア排出量が最も多い時期を狙い、11月は、気象条件的には3月と似つつも排出量がまだ多い時期を狙った。5月も11月も、良質の連続データが取得できた。アンモニア態窒素濃度としては、3月や11月よりも5月の方が高く、ローカルな風向で整理したところ、5月には西方(海風)からの空気塊でアンモニア濃度が高くなっていた。これは、ガス態のアンモニアが越境汚染している可能性を示すものでる。(長田) 今年度も能登半島珠洲において、無機全硝酸の連続観測を続けている一方、2012年6月から NOxを、11 月からは有機全硝酸の連続観測を開始した。冬場の例として、2013年1月の窒素酸化物の構成成分比を調べたところ、半分程度の割合でNOx として存在していることが明らかになった。また、有機、無機全硝酸の存在比はそれぞれ 30, 20% であり、無機よりも有機全硝酸のほうが高い結果となった。無機全硝酸は湿性沈着の影響を受けやすい一方、有機全硝酸はほとんど受けないため、この結果も冬季の日本海側における降水による無機全硝酸の湿性沈着の促進を支持していると考えられる。(定永)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の結果を踏まえ、目的に合致した適地にて計画通りの集中観測を実施できた。狙いの時期に、予定していたパラメータについて良質の観測データを得ることができたので、概ね順調に進展したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
2年次までの結果を補強するために、もう少し越境汚染の影響が強いことが予想され、かつ、アンモニアの観測に適した場所を探した。その結果、鳥取市の鳥取大学・乾燥地研究所を候補として下見し、共同利用の申請をおこなった。最終年度も、観測項目はガス態・粒子態のアンモニア態窒素、粒径別(PM2.5/10サンプラーによる)エアロゾル中イオン成分、粒子態硫酸イオンの先駆物質として二酸化硫黄、燃焼由来の汚染空気塊の指標として一酸化炭素(CO計をレンタル)、ローカルな湿性沈着や反応に影響を及ぼす気象要素(温度、湿度、風向、風速、雨量)、PM2.5/10、CPC/OPCによるエアロゾル粒子個数粒径分布を予定している。 鳥取での集中観測は、中国でのアンモニア排出量が高い6~7月に2週間程度、できればもう少し長い期間のデータを得たい。これらの観測・解析から、大気中でのアンモニア態窒素濃度と気相-固相の分配状態を把握し(長田)、化学輸送モデルのシミュレーション結果(連携研究者:九州大・鵜野)、日本海側のデータとして珠洲での全硝酸濃度など硝酸関係の観測結果(分担者:大阪府立大:定永)と比較検討する。また、珠洲での大気エアロゾル観測(連携研究者:金沢大学・松木)との比較検討もおこない、日本海での越境汚染について幅広い知見を得る。これら成果については、大気環境学会など関連学会で発表する予定である。
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