研究課題
植物が炭素(C)を分解されにくい形態で土壌に施用して、土壌C貯留量を増大させることは、大気中の二酸化炭素を減らし、地球温暖化を減速させる方策のひとつである。環境中に普遍的に存在する炭化物はその有力な材料候補であるが、炭化物の土壌中における動態はまだよくわかっていない。本研究は、土壌圏における炭化物の挙動、滞留時間と構造との関係を調べ、土壌C蓄積への寄与を明らかにすることを目的としている。本年度は、土壌型と炭化物の量、存在形態との関係に関する研究を進めるとともに植物体の燃焼温度と炭化物の構造特性との関係を解析した。遊離形炭化物は黒ボク土と褐色森林土でのみ検出され(18-133 mg g-1)、結合型炭化物も黒ボク土と褐色森林土で多く、他の土壌型では重量の1%未満であった。炭化物含量が低い土壌における定量誤差を回避するために、ブラックカーボン(BC)を硝酸で各種ベンゼンポリカルボン酸(BPCAs)に分解し、GC/MSおよびGCで定性・定量する方法を導入した。BPCAsの収量の和から推定したBC含量も黒ボク土と褐色森林土で高く、全土壌Cの約60%に相当した。赤黄色土、灰色低地土、灰色台地土では、BPCAsの収量は0.6-2.6 mg C g-1と少なく、土壌全Cに対する寄与率は7-29%であった。遊離形および結合型炭化物の収量の和とBPCAs法によるBC含量は、いずれも土壌全C含量との間に正の相関を示し、土壌型によらず炭化物が土壌C蓄積量の違いに寄与していることが分かった。また、異なる植物、異なる温度で調製した炭化物の化学構造を比較し、炭化温度600oC以下では、木本由来炭化物が草本由来炭化物よりも芳香族炭素に富み、縮合芳香環の平均サイズも大きいが、炭化温度が上昇すると芳香族炭素の相対含量や縮合環の平均サイズが増大し、600oC以上になると材料による差がなくなることを見出した。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Humic Substances Research
巻: 10 ページ: 11-19