研究課題/領域番号 |
23310006
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高橋 けんし 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (10303596)
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キーワード | メタン / 地球温暖化 / レーザー分光法 / 高感度計測 / フラックス / 植生 |
研究概要 |
温室効果気体の一つであるメタン(CH4)の収支の解明は喫緊の課題である。従来、大気中のCH4の検出は、容器にサンプリングした空気を実験室に持ち帰り、ガスクロで分析する手順が多数を占めていた。しかしこの方法では、サンプリングと分析に人手を要するため、せいぜい30分に一度のサンプリングが限界である。高感度・高信頼性な測定が容易に行えて、なおかつ、数秒から1分程度の高い時間分解能での測定が可能な計測手法の開拓が望まれている。本研究では、近年になって高出力で安定した動作が見込めるようになった半導体レーザーや導波路型波長変換デバイスと、超高感度なレーザー分光法とを融合し、CH4の高感度計測法を開拓することを目指している。また、フィールド等における植生からのフラックス計測へ展開する。23年度は差周波発生実験を実施し、併せて、光学キャビティーとその周辺システムの設計と組み立てを行った。差周波実験には、シグナル光としてDFBレーザーを、ポンプ光としてYAGレーザーをそれぞれ用いた。二色のレーザニ光を偏波保持型の合波カプラーに通したあと、周期分極反転型ニオブ酸リチウム結晶(PPLN)へ導入した。PPLNを精密に温度制御し、擬似位相整合によって3.3mm領域の差周波光を発生させた。差周波光の発生の確認は、PPLN結晶の出力光をインジウムアンチモン検出器に導入して行った。PPLNモジュールの出口にはシリコンの薄い窓板がついており、ポンプ光はフィルターカットされるが、DFBレーザーの光はシリコン窓板ではカットできないので、ゲルマニウムのウェッジ窓板を用いてフィルターカットした。これにより、インジウムアンチモン検出器には差周波光のみが導入されるようにできた。23年度はまた、メタン検出に有利な波長の検討を行った。分子分光データベースを用いて、他の分子からの干渉や、温度・圧力依存性などを精査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定どおり、導波路型波長変換デバイスを用いて、中間赤外光の効率的な発生に漕ぎ着けることができた。また、光学部品や真空部品を本課題の経費により購入し、独自に組み立てを行った結果、中間赤外光の損失が小さいことを確認し、24年度以降の研究計画へスムーズな橋渡しをすることができた。また、分子分光データベースの精査により、非常に高感度なメタンのセンシングに有利な遷移を抽出できた。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね順調に研究が進んでおり、申請時の計画通りに推進する。研究計画の変更あるいは研究遂行上の問題点は特に無い。
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