研究課題/領域番号 |
23310008
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
赤木 右 九州大学, 理学研究院, 教授 (80184076)
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研究分担者 |
高橋 孝三 九州大学, 理学研究院, 教授 (30244875)
佐野 弘好 九州大学, 理学研究院, 教授 (80136423)
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キーワード | 生物ポンプ / ケイ藻ケイ酸殻 / 沈降粒子 / 溶解 / 層状チャート |
研究概要 |
海洋の複雑な粒子状物質の挙動、鉛直輸送を担う実体の不理解が、炭素の循環を含む海洋の物質循環の理解を妨げて来た。申請者の最近の解析から導かれた、ケイ藻の凝集が引き起こす"ほとんど溶解するか、全くしないの"デジタルアクションが物質の鉛直輸送に重要であるという新しい出発点に立ち、沈降粒子と懸濁粒子のキャラクタリゼーションを行い、多くの元素の溶存プロファイルを理解する。鉛直輸送を実質的に担うものはケイ藻の凝集体であるとの認識から、初年度は I)ケイ藻とその凝集体がその変質によって、どのような物質を輸送する担体となり得るかを明らかにする。 II)ケイ藻の凝集体のケイ酸殻内部と外部とを区別する方法を開発し、その挙動の差異を明らかにする。 以上二つの項目について、研究を行い、対応する成果を以下に記す。 I-1電子顕微鏡観察によるケイ藻の化学的変化 対象の海域で観察される種(Coscinodiscus marginatusおよびNeodenticula seminae)を選び、電子顕微鏡で観測した。Alがケイ酸殻に偏在していることが分かった。ただし、この観察によって、個体差が予想以上に大きく、統計的な扱いに耐える分析は予算の関係から諦めた。 I-2ICP-MS、XRDの分析法によるケイ藻の変質の観察 ICP-MSによる観測から、希土類元素以外の多くの元素について、同じ溶解速度式で記述できることが分かった。 IIケイ藻殻内と殻外の有機炭素の分離法の開発 ペルオキソ二硫酸カリウムを酸化剤とする湿式酸化法によって、超音波処理の有無によりケイ藻殻内外の炭素を分離して定量する方法を確立した。弱い酸化条件であるため、炭素量により回収率の差が残るものの、比較実験には適用できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、二年目の研究の基礎作りと位置づけていた。必要な方法論を確立したこと、仮説の正しさを検証した点で、ほぼ目的は達成できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、実際の試料を用いて、ケイ酸内外の有機炭素の定量、XRDによるカオリナイトの検出を行う。また、放射光を用いたケイ藻ケイ酸殻中の微量金属元素の状態分析も行う。また、初年度確立した方法論についての論文を執筆し、投稿する。 初年度に確認したケイ酸殻試料の化学組成の大きな変動を考慮に入れ、SEMなどによる個体ごとの分析ではなく、総体試料を分析する方針へと転換することにした。この方針に対する科学的な妥当性については、初年度掲載された投稿論文により示されている。
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