研究概要 |
Alaska大学IARCを拠点に5月下旬からUAFサイトでCH4フラックスと微気象,ならびにCO2,エネルギなどの観測を開始した.海外研究協力者(岩田拓記,中井太郎)と院生などが現地で集中観測をおこない,植物生育期間(5月~10月上旬)の観測データを得た.これらの現地観測は,CH_4収支モデルや衛星モデルのパラメータ設定,検証のために不可欠な,分光測定,植生情報(蛍光反応,分光放射,葉面積指数,融解層深)測定などが含まれる. 凍土地帯では降雨が浸透しないため降雨直後に地下水位が上昇し,CH_4フラックスが放出になる.一方,晴天が続くと乾燥してCH4は地表で吸収される.この様にCH_4フラックスは複雑な挙動をするため,7月後半から放出場所、吸収場所それぞれの強度を明らかにするチャンバー測定を実施した. CH_4収支モデル(VISIT;Ito,2008)の精緻化を伊藤(国立環境研,連携研究者)が進め,従来のデータに基づいた評価を行ったが(Ito and Yasutomi,2011),既存のデータに基づくモデルでは,不確定性が大きいことが確認された.モデル研究の進展のためにもCH4観測データの整備が不可欠であることが示された. 広域評価のために,凍土層分布,植生分布,気象データなど広域情報を整備した.モデル入力変数などについて,VISITモデルの汎用CH_4収支スキームに観測データ解析から得られる影響因子を繰り入れ,モデルのテストランなどを実施した(Ito and Yasutomi,2011).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
凍土層のある北極域のツンドラや森林はCH_4の発生ポテンシャルは高いが,観測データは少なくモデル化など収支評価は不十分である.2011年夏季はアラスカ大学構内のクロトウヒ林(林床はタソックツンドラ)において,タワーを使った渦相関法,REA法,傾度法による連続CH_4フラックス測定を行ったことに加えて,チャンバーを使ったCH_4フラックスを測定し局所的な発生源/吸収源強度の空間的なばらつきを把握した.これらは,モデル化において,最も重要な観測データであり,2012年度も同様の観測を継続し,モデル化につなげる. モデル化研究では,連携研究者の伊藤が,CH4フラックスの広域評価の論文を発表し,観測データの不足による不確実性が大きいことを明らかにした.本研究成果のモデルへの繰り込みが重要である.
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