研究課題/領域番号 |
23310011
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
大浦 健 名城大学, 農学部, 准教授 (60315851)
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研究分担者 |
堀井 勇一 埼玉県環境科学国際センター, 化学物質担当, 主任 (30509534)
榊原 啓之 静岡県立大学, 付置研究所, 助教 (20403701)
新妻 靖章 名城大学, 農学部, 准教授 (00387763)
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キーワード | ハロゲン化PAH / 多環芳香族炭化水素 / 未規制リスク因子 / 環境動態 / 光分解 / 遺伝毒性 |
研究概要 |
最近、塩素もしくは臭素が1~2原子置換した多環芳香族化合物(PAHs)が大気中に存在することを見出した。これらの物質はダイオキシンと同等のリスク因子であることが環境濃度や毒性試験から推察されたが、同定した物質数が限られており、このようなハロゲン化PAHsの環境動態、生態影響は未だ不明な点が数多く残されている。そこで本年度は、高塩素PAHsの標準物質作製ならびに高感度分析法の開発、光分解による影響を明らかにすることを目的とした。高塩素化PAHsの合成として4環系のpyreneと5環系のbenzo[a]pyreneを母核とした2~4塩素置換体をそれぞれ合成し、ほぼ純品に精製することができた。また、塩素化PAHsの高感度簡易分析法の開発として、前処理カラムの種類ならびにGC/MSの分析条件を検討した。その結果、大気粉塵試料ではシリカゲルカラムを前処理に用いることで十分にクリーンアップできることが明らかとなった。一方、堆積試料や生体試料(魚)の分析に対してシリカゲルカラムやスルホキシドカラムのような順相系カラムでは爽雑物を除去することが困難であった。次に、四重極型GC/MSならびにイオントラップGC/MSを用いて最適な分析条件を検討し、最適なイオン化電圧ならびにイオン化エネルギーの値を決定することができた。また、イオントラップGC/MSにおいてもMS/MSのイオン化における最適電圧を種々決定し、20種からなる塩素化PAHsの一斉分析法を確立することができた。とくに、イオントラップGC/MS/MSでは爽雑物を含んだ生体試料において効果的に分析できることがわかった。最後に、塩素化PAHsの光毒性評価として、phenanthreneの1~3塩素置換体を用いて光分解試験を行い、分解生成物の遺伝毒性評価をAmes試験によって実施した。その結果、9,10-dichlorophenanthreneの光産物に遺伝毒性を有することが明らかとなった詳
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた標準物質の作製、分析条件の検討は概ね予定通り遂行することができたが、海外での環境試料捕集において調整が難航したため国内でのサンプリングを重点的に行った。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は確立した分析方法を用いて、大気、土壌、野生生物組織中のハロゲン化PAH分析を試み、環境動態解明を目指す。一方で、ハロゲン化PAHによる生体影響を評価するためにマウスへの曝露試験を実施し、生体残留性や遺伝子発現の変化を明らかにする。
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