研究課題
温暖化が光合成、呼吸、展葉フェノロジーに与える影響などを明らかにするための温度操作実験、窒素負荷量の変化が生産、分解、土壌窒素無機化、栄養塩吸収などのプロセスに与える影響を評価するための窒素施肥実験を行う場所を、北海道大学苫小牧研究林にて選定し、個葉および群落スケールでの光合成速度(CO_2収支)と分光反射特性に関する予備実験の一部を開始した。国立環境研究所が管理する山梨県富士北麓フラックスリサーチサイトにおいて、個葉および群落スケールでの光合成速度(CO_2収支)と分光反射特性について、群落スケールについては通年、個葉スケールについては着葉期間中(4月~11月)のデータを収集した。また、AsiaFluxデータベースを利用して、陸域生態系モデルの検証に利用するためのCO_2収支データの整備を進めた。衛星観測データを複合利用した陸域炭素収支量の推定手法を独自開発し、日本域の自然生態系における炭素収支量を1km解像度で正確に解析することを目指し、衛星データ利用型陸域生態系モデルBEAMS(Biosphere model integrating Eco-physiological And Mechanisti capproaches using Satellite data)に統合するための窒素循環モデルの改良に着手した。本研究では気候変化に伴う生態系の変化を検出するため、温度をはじめとする環境要因の変化が窒素循環に与える影響を陽に考慮する必要がある。特に、光合成、炭素分配率、土壌有機物分解プロセスは窒素動態との関係が強いため、これらのプロセスに与える窒素の効果を適切に組み込むことが重要である。本年度は、窒素循環の重要プロセスを選出して各種パラメータの検討を行うと同時に、本研究の検証サイトでモデルの評価を行ううえで重要なパラメータである個葉のC/N比季節変化のデータを整備した。
2: おおむね順調に進展している
申請書に記載した研究計画に従って、北海道および山梨県における本研究の野外実験サイトにおいて、それぞれ温暖化影響操作実験の予備実験開始、窒素関連のデータ取得開始を行うことができた。また、窒素動態を組み込んだモデルの改良についても、重要なプロセスの選定と、検証用パラメータの整備を開始した。以上の進捗は、計画にそっておおむね順調と判断できる。
本研究が実験・観測を行う実施場所として申請書に記載した観測サイトのうち、岐阜県高山市の落葉広葉樹林における計画は縮小し、かわりに国立環境研究所が管理する富士北麓フラックスリサーチサイトや北海道大学苫小牧研究林での研究を強化する予定である。その理由は、申請時に分担者として参加する予定であった岐阜大学・村岡裕由が、文部科学省の他の研究課題採択によって生じた規則に従い、当該科研費の分担者としてエフォートを割くことができなくなったためである。なお、岐阜大学で収集する予定であったデータの一部は、他の観測サイトの新規データおよび既存データを活用するなどの方法で補充が可能であるため、本研究全体の計画進行への影響はない。
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Agricultural and Forest Meteorology
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doi:10.1016/j.rse.2011.03.007