研究課題
硫化ジメチル(DMS)は、植物プランクトンが生成するジメチルスルフォニルプロピオネート(DMSP)が微生物分解される際に生成される。従来のDMS分析法であるガスクロマトグラフィー法では、ろ過によって植物プランクトンの除去を行うことで、試料中のDMSP・DMS生成を防いでいる。我々が開発したバブリング式の気液平衡器と陽子移動反応―質量分析計を組み合わせた、海水中の揮発性有機化合物(Volatile organic compounds: VOC)の定量法(equilibrator inlet- proton transfer reaction-mass spectrometry: EI-PTR-MS)では、自然海水を連続的に平衡器に導入することにより、海洋表面におけるDMS他VOC濃度の連続観測を可能にしているが、平衡器内部で植物プランクトンによるDMSP・DMSの生成が行われ、DMS濃度の測定に影響を与えている懸念があった。そこで、ろ過をしない自然海水を用いることによる、DMS濃度測定への影響を評価した。平衡器内における海水DMS濃度の挙動を調べるために、異なる条件の海水試料(未ろ過/ろ過海水)・バブリングガス(N2/純空気)を用いて、平衡器内のDMS濃度の変化を比較した。未ろ過/ろ過海水をN2ガスでバブリングしたとき、ろ過海水ではDMS濃度は増加したが、未ろ過海水では変化を示さなかった。また、N2/純空気ガスで未ろ過海水をバブリングした場合、N2ガスを用いたときのみDMS濃度は増加し、海水中の酸素枯渇と同時にDMS増加が生じた。この結果から、海水中で酸素枯渇が生じない限りDMS濃度は増加せず、DMS濃度測定に影響しないと示唆される。したがって、EI-PTR-MS法では純空気をバブリングガスとして用いることで、微生物活動によるDMS増加の影響は防げることが示された。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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