研究課題
佐賀大学ライダーグループ:ライダー観測に使用している光電子増倍管は近距離からの強い散乱信号を受けるとノイズを発生するため、これまでオゾン測定高度は6 kmまでに制限されていた。新たに、小型の受信システムを導入することにより、高度約0.3~10 kmまでのオゾン測定が可能となった。この新システムによりオゾン観測を継続中である。気象研ライダーグループ:ライダー観測に使用しているレーザーに発生した不具合に対処しつつ、継続して観測を行った。観測は、連続9日間を含む50日間(うち、オゾンゾンデとの同日観測は13回)行い、オゾンゾンデや数値モデルの予測結果との簡単な比較を行った。レーザー装置の不具合については、その原因を究明し、安定した観測が継続できるようにレーザーの改修を行った。また、観測データやモデル計算結果を閲覧・データ取得ができるWebサイトを構築し、関係者に公開した。モデルグループ:全球化学気候モデル(MRI-CCM2)を毎日自動実行して関係者に自動的に計算結果を配信するシステムを構築して現在運用中である。気象庁非静力学モデルNHMと結合した大気化学モデルNHM-Chemを開発し,全球モデルからの1wayネスティングシステム(MRI-PM/c)を構築した。東アジア領域における地上オゾン濃度の再現と解析結果をGeosci. Model. Dev.誌等で発表し,オゾンライダー,航空機観測との結果を比較してマルチスケールモデリング(全球300km―領域20km)解析を実施した。また、温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)の温室効果ガス観測センサの熱赤外(TIR)バンドからの対流圏オゾンカラム量について、月ごとの全球分布を導出し、緯度の違いによる変動や季節変動を観測することができた。オゾンゾンデ観測とMRI-CCM2を比較したところ、両者は良い一致を示した(大山、川上)。
2: おおむね順調に進展している
観測面ではつくばと佐賀の2地点で対流圏オゾン鉛直分布を開始することができた。つくばに関してはライダーの不具合を改修することにより、観測データを安定的に取得できる目処が立った。佐賀に関しては、数日毎の観測をほぼ1年間行うことができ、季節変化などを捉えることができつつある。また、ライダーを改修することにより、従来(地上から6km)以上に高い高度(地上から10km)の観測が可能となった。全球化学輸送モデルに関しては、観測のタイミングを決定する際の資料として毎日のモデル計算結果を関係者に自動配信する仕組みを構築した。また、オフライン版領域化学輸送モデルに関しては全球化学輸送モデルからのネスティングができる環境を整え、空間代表性が小さなライダー観測と比較できるようにした。
研究計画はおおむね順調に進展しているので、当初予定の計画に沿って研究を推進する。ライダー観測に関しては、引き続きつくばと佐賀における対流圏オゾン観測を実施する。全球化学輸送モデル、領域化学輸送モデルに関してはモデルによる日々の計算結果をライダー観測グループに提供し、高濃度オゾンイベント等が予測された際に機動的に観測を実施できるようにする。オゾンライダーの観測結果に加え、衛星観測データ(GOSAT)等の観測結果も統合的に利用して高濃度オゾンイベントの解析を目指す。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件) 学会発表 (13件)
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