平成24年度は、共鳴送電方式による無線電力伝送時の生体への安全性を直接的に評価することが可能となる細胞曝露装置を構築するとともに曝露装置の電磁環境評価を完了した。本曝露装置は、細胞培養に必要となる温度37℃、湿度100%、二酸化炭素濃度5%等の条件を満足するとともに、動作共鳴周波数12.6MHzにおいて、共鳴送電時の細胞曝露磁界強度は最大送電時に80A/mを上回る。この磁界強度は、国際非電離放射委員会(ICNIRP)が1998年に公表した周波数0~300GHzを対象とするガイドラインにおける12.6MHzの指針値の50倍、2010年に公表した、周波数100kHzまでを対象とするガイドライン中で述べられている10MHzでの指針値に等しい。 我々は、この細胞曝露装置の細胞培養環境の安定性を確立させるため、細胞増殖能評価、細胞周期評価に取り組み、曝露装置内部の細胞基本動態が適切であることを確認した。さらに、実際の共鳴送電時における細胞増殖能評価、細胞周期評価に取り組み、共鳴送電方式による無線電力供給時の直接的な生体影響評価を開始した。 共鳴送電技術については、実用化が期待されるものの直接的な生体影響評価は行われていない状況において、安全性を直接的に評価できる細胞曝露装置を世界で初めて構築し、その評価を開始したことは、非常に大きな意義を持つ。 なお、引き続き、細胞の遺伝毒性評価を行うべく、コメットアッセイおよび小核形成試験実施のための実験環境構築を完了しており、平成25年度にこれらの評価から取り組んでいく。
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