研究概要 |
これまでの本研究によるPCB全異性体209種の超微量分析では分離性能に優れたHT8-PCBカラムを使用してきたが、幾つかのPCB異性体の選択イオンモニタリング(SIM)のピークが重複していた。これまで分析した日本近海の魚類では4塩素化物の#52と#69はSIMピークが重複する“#52, 69”のピークとして検出されたが、“#52, 69”は比較的濃度が高いPCB異性体である。既報では、#52はカネクロール製剤中の主要な異性体であるが、#69はほとんど含まれていない。よって、魚類試料の”#52, 69”が#52、#69のいずれに(または両方に)由来するのかを解明することは、非意図的に生成されたPCB異性体の探索を行う上で重要である。そこで、本年度は、分離性能の改善を目指して、Deansスィッチを装備した質量分析計及び電子捕獲型検出器付きガスクロマトグラフ(GC/MS/ECD)を用いスズキ中の”#52, 69”の詳細な分析を行った。第1カラムとしてHT8-PCBカラムを装着したガスクロマトグラフによりPCBs成分の分離を行った後、Deansスイッチにより”#52, 69”のピーク部分をカットし、極性の異なる第2カラムへ導入し、両異性体を分離分析した。その結果、”#52, 69”は全て#52であった。以上のように、従来よりも高精度で重複したPCB異性体のSIMピークの分離することができる分析法を開発することができた。 また、マレーシアの各地から採集したスズキ類からは約120~160の異性体が検出された。そのうち、マラッカ海峡から採集した魚類試料から2塩素化物の#11が特に高濃度で検出された。#11は、近年、北アメリカで水、大気等からの検出が報告されている非意図的に生成されたPCB異性体である。
|