研究課題/領域番号 |
23310030
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
泉山 茂之 信州大学, 農学部, 教授 (60432176)
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研究分担者 |
星川 和俊 信州大学, 農学部, 教授 (40115374)
上原 三知 信州大学, 農学部, 助教 (40412093)
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キーワード | 環境マネイジメント / 野生動物管理 / 生息地保全 / 土地利用 |
研究概要 |
個体群レベルの信頼できる生息地推定をするため、調査対象地域において新たに27頭のツキノワグマを捕獲し、GPS発信機付き首輪を装着し追跡した。長期における追跡を可能にするため測位間隔を1時間おきに設定し、月2回程度の頻度で首輪からデータ回収を行った。結果、平成23年の冬眠前の時点でメス13頭・オス10頭の測位データを生息地解析に利用可能となった。 一方、調査対象地域における植生図・数値地図情報・標高データDEMなどの基礎的地理情報データを収集し、より精度の高い植生図を作成するためAROS衛星画像を入手した。ツキノワグマの生息地という視点から衛星画像解析ツールを活用し10の植生に再分類した。また、DEMデータから日射量・土壌水分指数・傾斜角、また、人間による土地利用の影響を見るための道路・林縁・居住地からの距離などの生息地選択の要因となる地理情報レイヤを作成した。 GPS測位データからクマの個体毎の行動圏を最外郭法で特定化し、それぞれの行動圏内にいて利用地点と使用可能地点の環境変数を比較することによって得られる資源選択関数を用いて、対象地域全域におけるクマの生息地選択の相対的可能性を示すマップを推定した。さらに夏と秋のクマの生息地選択の違いを見るため、生息地推定モデルの精度を検証した。モデルの検証をした結果、ある程度信頼できるモデルに進展したことが確認できた。それは他頭数のクマのデータ収集と衛星画像などの精度の高い地理情報の活用が、信頼できるモデルを構築するために不可欠であることを示していると思われる。資源選択関数(RSF)モデルは野生動物の生息地選択における人間活動の影響や、自然環境要因との関連など、従来定量的に評価することが困難な課題に新しい知見を生み出す大きなポテンシャルを持っていることが実証された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たなツキノワグマの捕獲が思いのほか順調に進み、解析のために必須となる基礎データの収集が順調に進行している。また、精度の高い衛星画像をもとに、植生や地形などのデータフレームの作成は順調に進んでいる。おおよそ当初計画通りに研究が進展中である。
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今後の研究の推進方策 |
まもなく、生息環境要因のデータフレームの作成には完成へ向けての目途が立つと考えられる。今後は、GISシステム上において、実際のツキノワグマの位置データとデータフレームを実際に重ね合わせ、RSFモデルの推定精度の検証を進める。おおむね当初計画通りに研究は進展中であり、今後も計画を変更する必要性はないと判断される。
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