研究課題/領域番号 |
23310030
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
泉山 茂之 信州大学, 農学部, 教授 (60432176)
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研究分担者 |
星川 和俊 信州大学, 農学部, 教授 (40115374)
上原 三知 信州大学, 農学部, 助教 (40412093)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 環境マネイジメント / 野生動物管理 / 生息地保全 / 土地利用 |
研究概要 |
一年を通した生息地選択の季節変化を把握するため,調査対象地域である中央アルプス北部地域において,さらに26頭のツキノワグマの捕獲・追跡を行い,冬眠時期以外の3つの季節のGPS測位データを入手した。 資源選択関数(RSF)モデルの基本的開発プロセスを確認した後,さらにモデルの精度を高めるため,モデルの基本となる解析手法の改善を行った。具体的にはツキノワグマの個体差を反映させるため,標本数のバラツキを考慮に入れた混合ロジスティック回帰モデル手法を導入した。一方で,博士課程の学生をカナダ・アルバータ大学のS.E.Nielsen教授の元に派遣し,最先端の資源選択関数(RSF)モデルの技術を取得しつつ本調査で取得した動物のデータに適用した。さらに現在先進国を中心に急速に普及しつつあるこのモデルについての文献調査を補足的に行い,今後の野生動物生息地の研究及び教育における基礎固めを図った。そこで,アジア・アフリカなどで頻繁に起きている人と野生動物との軋轢におけるRSFモデルの適用がまだ十分なされていないことが明らかになり,この分野での応用の必要性を確認した。 そこで,RSFモデルの応用展開の潜在性を生かし,生息地と生息数との関連を把握するアプローチ,潜在的に人と野生動物の軋轢発生が起こりやすい地域の特定,また,人間利用地とツキノワグマの生息地の境界領域の特定のための推定マップの作成などを行い,資源選択関数(RSF)モデルが人と野生動物の軋轢発生のメカニズムや,その長期的な解決のために非常に有効な推定方法であることが実証できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ツキノワグマの新規捕獲個体の新規データの収集が進み、基礎データの整理が順調に進み、現在は試行錯誤を重ねながら、解析の核心部分を進めている段階である。これまでの成果は An evaluation of habitat selection of Asiatic black bears in a season of prevalent conflictsとして、夏期と秋期の環境選択の相違について取りまとめ、現在印刷中である。おおよそ当初計画通りに研究が進展中であり、2報目の論文作成も佳境に入っている。
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今後の研究の推進方策 |
生息環境要因のデータフレームの作成には完成へ向けての目途が立った。今後は、GISシステム上において、実際のツキノワグマの位置データとデータフレームを実際に重ね合わせ、RSFモデルの推定精度の検証を進めている。ツキノワグマの生息地選択を決定付ける環境要因候補のリストをもとに、最適モデル動物の生息地選択を最も良く説明できる変数を組み合わせ、AICが低い値の変数のセットの選択、単変数回帰解析による、個々の変数ごとのワルド値とAIC値の比較を進めた。この結果をもとにカナダ・アルバータ大学のDr. S.E.Nielsenとの議論を深め、クマは個体差が大きいためIndividual Modelを採用により解析を進めることとした。この成果は、現在Identifying key habitat selection and delineating human-wildlife boundary; A case of Asiatic black bear for fine scale conflict migration として作成中である。おおむね当初計画通りに研究は進展中であり、今後も計画を変更する必要性はないと判断される。
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