研究課題/領域番号 |
23310032
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
新澤 秀則 兵庫県立大学, 経済学部, 教授 (40172605)
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研究分担者 |
今井 晴雄 京都大学, 経済研究所, 教授 (10144396)
秋田 次郎 東北大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (10302069)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 気候変動 / 京都議定書 / ポスト2012 / メカニズム / 経済理論 |
研究概要 |
気候変動枠組条約交渉にオブザーバー参加し,また炭素市場メカニズムに関するニュースレターを購読し,さらに,実際に交渉に携わっている人やプロジェクトに携わっている人を招いて話を聞き,クリーン開発メカニズム(CDM)など現行メカニズムの実態や改革動向を調査し,新規メカニズムの議論の動向を確認しつつ進めた。 CDMは,ベースライン排出量を下回った分について,排出権が発行される。ベースラインの設定の仕方には,実績活動量(生産量)に関わらない絶対的ベースラインか,実績活動利用に比例した相対的ベースラインか,歴史的ベースラインか産業内平均ベースラインか,などがあり,それぞれ,あるいはその組み合わせによってインセンティブ効果が異なる。 CDMのベースライン設定方法がもたらすインセンティブ効果について,ベースライン設定方法の相違によって生じる自己選択の側面に着目したモデル分析を行った。その結果,以前インセンティブのあったプロジェクトと全く異なるグループのプロジェクトのみがインセンティブを持つケースがありうるなど,問題点が指摘された。また,相対的ベースラインの場合,それが生産補助金になることから,活動量に上限が設定されていることをふまえ,そのような保守的なベースラインがもたらすインセンティブ効果について分析を行った。その結果,絶対量ベースラインとくらべて,保守的な相対的ベースラインが参加者にとって不利になることがわかった。 京都議定書は,2008年から2012年までの先進国の目標を決めただけであった。COP18で,より少ない国について2013年から2020年までの目標が決まった。そこで,このように漸進的に目標が決まる状況を,先進国と途上国の間の不完備契約としてとらえた2段階バーゲニングモデルを開発し,不完備であるが故に発生する非効率性と途上国の損得を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CDMについて,承認されたベースライン設定方法の実態分析の結果,従来の理論モデルはCDMの実体を反映していないことが明らかになったので,実態に即したモデルの開発を行っている。本研究に関連して,学会報告を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
CDMのようにベースラインを基準として排出権等を発行するメカニズムは,目下交渉中の2020年以降に関する新しい議定書における新メカニズムとしても有力で,本研究でCDMの実態に即して開発したモデルは,それらのパフォーマンスの評価にも応用できる。引き続き,交渉の推移をふまえながら,特に,徐々に明確になる現行メカニズムの改善や新メカニズムについて,適宜モデルに組み込んだ分析を行う。また,資金メカニズムや技術移転メカニズムなど、交渉では別枠扱いになっている他のメカニズムを合わせた総合的な分析に着手する。
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