1)現行メカニズムの分析については,自己選択モデルに基づくCDMの標準化の分析などを継続して行った。2)2020年以降のメカニズムに関しては,パリ協定はすべての主張を包含する合意となり,それらの詳細に関する議論は,今後の交渉に持ち越され,27年度中は進まなかった。従って,まず26年度までの交渉をふまえて,すでにCOP決定として合意していることや合意していない論点の洗い出しを行い,本の1章として公表し,学会発表も行った。またパリ協定のメカニズムに関する第6条等について,その意味や今後の論点について考察を行い,学会誌に投稿し受理された。パリ協定では,絶対量目標以外の排出量目標を設定した国がかなりあるために,京都議定書よりメカニズムの運用ルールが複雑にならざるをえない。 3)途上国とメカニズムの関係については,多段階交渉モデルの分析で,最初に途上国に義務を負わせない京都方式の問題点を交渉分析から行っていたが,パリ協定での途上国の地位にも差異が観察され,この説明要因としての格差を意識した選好を各国が持つ場合の交渉分析を行い,本の1章として公表した。 4)途上国参加問題,ならびに,5)資金,技術移転,そしてREDDなど,条約の下での他のメカニズムについては,26年度と比べて新たな展開は見られなかった。 6)理論ツールの開発については,留保利得水準が不完備情報であるような自己選択問題の分析可能性などを中心に,理論結果の適用可能性を検討した。また,上述の3)と関連して,社会的規範などが交渉に影響しうる可能性について,実験研究とのかかわりについても検討した。
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