• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2011 年度 実績報告書

幹細胞における選択的染色体分配に対する放射線の影響評価

研究課題

研究課題/領域番号 23310039
研究機関大阪府立大学

研究代表者

児玉 靖司  大阪府立大学, 理学系研究科, 教授 (00195744)

キーワード神経幹細胞 / ニューロスフェア / 選択的染色体分配 / CD133陽性細胞
研究概要

本研究の目的は、幹細胞におけるランダム染色体分配と選択的染色体分配のバランスに、放射線被ばくがどのような影響を与えるのかを探り、選択的染色体分配の制御と発がんとの関係を明らかにすることである。そのために本研究では、神経幹細胞を含むニューロスフェア細胞を胎齢14.5日のマウス胎児脳から採取して用い、対照細胞としてマウス線維芽細胞を用いた。選択的染色体分配を検出するために、細胞を5-エチニル-2'デオキシウリジン(EdU)存在下で2回DNA合成を行わせ、その後の細胞質分裂をサイトカラシンBで阻害して2核細胞を形成させた。次に、2つの核のEdU取込量をEdUに蛍光物質を結合させ、蛍光量を定量化して比較した。選択的染色体分配を行う細胞では、2核の蛍光量に偏りが生じると期待される。そこで、画像解析ソフトを用いて2核の蛍光強度を定量化し、その比が6:4以上に偏っている場合に選択的染色体分配であると判定した。X線非照射の線維芽細胞では、選択的染色体分配を行う細胞はみられなかったのに対し、ニューロスフェア細胞では、その割合は1%であった。そこで、1Gy、2Gy、3GyのX線を照射した場合について調べると、選択的染色体分配を行う細胞の割合は、それぞれ、0.6%、0.37%、0.22%となり、線量依存的に低下した。一方、ニューロスフェア細胞集団に存在する幹細胞マーカーCD133陽性細胞の割合は、非照射、1Gy、2Gy、及び3Gy照射の条件下で、それぞれ、1.4%、0.98%、0.68%、0.23%となり、線量依存的に低下することが分かった。したがって、本研究でみられたニューロスフェア細胞におけるX線照射による選択的染色体分配細胞の存在割合の低下には、CD133陽性細胞の存在割合の低下が関与している可能性が示唆される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

間期2核細胞を用いた選択的染色体分配の検出とこの実験系を用いた放射線被ばくの影響については順調に進み、おおむね当初の目標を達成した。すなわち、放射線被ばくにより、線量依存的に選択的染色体分配を行う細胞の割合が低下することが明らかになった。一方、この選択的染色体分配の制御機構におけるp53遺伝子の役割に関する解析は進まなかった。その理由は、p53(-/-)ニューロスフェア細胞への遺伝子導入効率が極端に低く、遺伝子導入細胞が得られなかったからである。したがって、区分は(3)とした。

今後の研究の推進方策

今後、以下の項目について検討を進める。
(1)間期2核細胞とは別に、分裂後期(anaphase)細胞を標的にして、染色体レベルでの選択的染色体分配の検出を試みる。
(2)p53(-/-)細胞への野生型p53遺伝子の導入効率を上げる条件を検討し、遺伝子導入細胞を分離する。
(3)前述の遺伝子導入細胞が得られたら、p53(-/-)細胞とp53(+/+)細胞で、選択的染色体分配を計測する。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2011 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (9件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Epigenetic gene silencing is a novel mechanism involved in delayed manifestation of radiation-induced genomic instability in mammalian cells2011

    • 著者名/発表者名
      Suzuki, K., Yamaji, H., Kobashigawa, S., Kawauchi, R., Shima, K., Kodama, S., Watanabe, M.
    • 雑誌名

      Radiation Research

      巻: 175 ページ: 416-423

    • DOI

      10.1667/RR2391.1

    • 査読あり
  • [学会発表] マウス神経幹細胞における放射線応答2011

    • 著者名/発表者名
      児玉靖司、白石一乗、寺本敬志、今西香絵、原正之
    • 学会等名
      日本放射線影響学会第54回大会
    • 発表場所
      神戸商工会議所会館(神戸市)(招待講演)
    • 年月日
      20111117-20111119
  • [学会発表] 神経幹細胞における選択的染色体分配に対する放射線影響2011

    • 著者名/発表者名
      原條靖之、白石一乗、原正之、児玉靖司
    • 学会等名
      日本放射線影響学会第54回大会
    • 発表場所
      神戸商工会議所会館(神戸市)
    • 年月日
      20111117-20111119
  • [学会発表] 2倍体を示すマウス不死化ニューロスフェア細胞の樹立2011

    • 著者名/発表者名
      今西香絵、白石一乗、原正之、児玉靖司
    • 学会等名
      日本放射線影響学会第54回大会
    • 発表場所
      神戸商工会議所会館(神戸市)
    • 年月日
      20111117-20111119
  • [学会発表] ヒト線維芽細胞における低線量放射線超感受性に関する解析2011

    • 著者名/発表者名
      岩井明乃、白石一乗、児玉靖司
    • 学会等名
      日本放射線影響学会第54回大会
    • 発表場所
      神戸商工会議所会館(神戸市)
    • 年月日
      20111117-20111119
  • [学会発表] 定量的テロメアFISH法によるテロメア不安定化の評価2011

    • 著者名/発表者名
      塚本淳、白石一乗、児玉靖司
    • 学会等名
      日本放射線影響学会第54回大会
    • 発表場所
      神戸商工会議所会館(神戸市)
    • 年月日
      20111117-20111119
  • [学会発表] テロメア配列を含むRNA分子(TERRA)の発現に対するX線及び紫外線の影響2011

    • 著者名/発表者名
      徐子牛、白石一乗、児玉靖司
    • 学会等名
      日本放射線影響学会第54回大会
    • 発表場所
      神戸商工会議所会館(神戸市)
    • 年月日
      20111117-20111119
  • [学会発表] 放射線被ばく染色体を介した染色体不安定性2011

    • 著者名/発表者名
      児玉靖司、白石一乗、押村光雄
    • 学会等名
      第70回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      名古屋国際会議場(名古屋市)
    • 年月日
      20111003-20111005
  • [学会発表] UVA照射染色体の移入による染色体不安定性の誘発2011

    • 著者名/発表者名
      漆原あゆみ、児玉靖司
    • 学会等名
      第70回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      名古屋国際会議場(名古屋市)
    • 年月日
      20111003-20111005
  • [学会発表] Characterization of biological response to ionizing radiation in mouse neural stem cells2011

    • 著者名/発表者名
      Seiji Kodama, Kazunori Shiraishi, Takashi Teramoto, Kae Imanishi, Masayuki Hara
    • 学会等名
      14^<th> International Congress of Radiation Research
    • 発表場所
      Warsaw, Poland
    • 年月日
      20110828-20110901
  • [備考]

    • URL

      http://chokai.riast.osakafu-u.ac.jp/%7Ehousya6/home.html

URL: 

公開日: 2013-06-26  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi