研究課題/領域番号 |
23310049
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
我妻 和明 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (30158597)
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キーワード | 鉄スクラップ / リサイクル / 有価元素 / トランプエレメント / レーザー誘起プラズマ / 発光分光分析 |
研究概要 |
電気炉製鋼法は主に鋼スクラップを原材料とし、鋼のリサイクルに対して非常に重要な役割を担っている。鋼スクラップ材は一般に銅やスズなどの鉄鋼の性能を低下させるトランプエレメントを混入することが多く、また鋼スクラップの中でも特にステンレススクラップは有価な資源であるニッケル及びクロムを含有しているが、これらのスクラップは現在鉄源として電気炉に再投入されているのが現状である。これらの現状に鑑み、本課題は金属表面にレーザーを照射してレーザー誘起プラズマを発生させ、その発光から元素分析を行うことでスクラップの事前分別を試みるものである。本年度はスクラップの母材である鉄とトランプエレメントの代表である銅について、発光特性の経過時間およびガス雰囲気における変化を具に解析した。その結果として、特に鉄原子の減圧下の励起については高速電子の衝突によるものの他に、アルゴン雰囲気下では電荷移動励起が、ネオン雰囲気下ではペニング衝突による励起が主要な励起機構であることを明らかにした。また、銅については5s-4p遷移による特異なイオン線による発光を観測し、発光特性の経時変化が主要な共鳴線である4p-4s遷移によるものと大きく異なることを明らかにし、これらの成果を13に挙げる2編の論文として投稿し、受理された。またこれらの情報を元に分析線の検討を行い、上記と同様の減圧雰囲気に加えてよりハンドリングが容易な大気雰囲気下における検量線の作成を試みており、これらの成果は来年度以降に報告する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
9の研究実績の概要に記した通り、鉄スクラップ中の有価元素およびトランプエレメントのプラズマ発光による元素分析を行う上で重要となる鉄及び銅の発光挙動については明らかにすることができたが、東日本大震災の発災以降、主要な装置であるCCDカメラの故障に代表される対策に時間を費やしたため、当初計画より若干の遅れが出ているのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
前述のCCDカメラの補修、装置の耐震固定化に加えて、位置決めなどの操作をより精密に一括して行うことができるように光学系を改造した。これらの改造によって得られるデータの量および確度、精度がより一層向上するものと考えられる。また次年度からは2台のパルスレーザーを用いたダブルパルスによってターゲットとする元素(有価元素およびトランプエレメント)の選択励起について取り組む予定である。
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