研究課題/領域番号 |
23310050
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
細見 正明 東京農工大学, 大学院・工学研究院, 教授 (90132860)
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研究分担者 |
寺田 昭彦 東京農工大学, 大学院・工学研究院, 講師 (30434327)
周 勝 東京農工大学, 大学院・工学研究院, 助教 (50451985)
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キーワード | 水田 / 飼料イネ / 畜産排水 / メタン / 亜酸化窒素 / アナモックス細菌 / 脱窒性メタン酸化細菌 / 水管理 |
研究概要 |
本研究では、飼料イネを植栽した水田に畜産排水を施肥し、適切な田面水の管理などにより、アナモックス細菌及びメタン酸化細菌の脱窒活性を高め、水田からの亜酸化窒素及びメタンの放出を抑制した環境低負荷型の窒素除去システムを構築する。これらの目的を達成するために、本年度は、(1)脱窒速度を含めた窒素収支の把握、(2)水管理による酸化還元電位制御による温室効果ガス削減の試み、(3)窒素除去を担う微生物群の同定・定量方法の確立、を行った。(1)では実験圃場水田において窒素収支を追跡可能なチャンバーを作製・改良・設置することにより、安定性同位体を用いた微生物による窒素化合物の物質収支を追跡することが可能になった。(2)では、水田からのメタン・亜酸化窒素の温室効果ガス放出量の削減が可能な水管理の方法を検討した。台風等の影響により、予定していた水管理は達成できなかったが、水位が低い系の方がメタン放出量を10倍近く削減することが可能であり、今後の水管理の指針を得た。(3)では、水田中に棲息するアナモックス細菌および脱窒性メタン酸化細菌の生態解析を行った。アナモックス活性は脱窒活性と比べると非常に低く、16S rDNA遺伝子に基づくアナモックス細菌の検出では存在が確認されなかった。一方、16S rDNA遺伝子に基づくNC10門に帰属する脱窒性メタン酸化細菌は、底泥などの自然環境に棲息するNC10門のクラスターに近縁な種が検出された。これらのクラスター用のプライマーの設計を行い、(2)を行った水田土壌中のNC10門細菌群の定量を行った。水田から放出されるメタンフラックスとこれらの細菌群の明確な相関性は得られなかった。メタンに生成・消費に関連する微生物群の定量を含めた体系的な議論が必要であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた3つの検討項目は進度こそ違いがあるものの、予定した計画が適切だったため、計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度において、亜硝酸・硝酸を電子受容体としてメタンを酸化可能な微生物群の検出プライマーが開発できたことにより、水田土壌中のメタンの流れをより正確に把握できる可能性がある。今年度からはマイクロセンサーの利用により、水田土壌の酸化・還元状態や温室効果ガスの時空間的な解析が可能になる。水管理方法の検討といったエンジニアリングな側面と、上述した学術的な知見を融合することにより、水田からの畜産排水処理技術の確立と温室効果ガス生成削減に向けたストラテジーの確立を目指す。
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