研究課題/領域番号 |
23310051
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
片山 葉子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90165415)
|
研究分担者 |
尾高 雅文 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20224248)
野口 恵一 東京農工大学, 学術研究支援総合センター, 准教授 (00251588)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 硫化カルボニル / 致死性有毒ガス / 酵素分解処理 / 分子育種 / 結晶構造解析 / 分解微生物 |
研究概要 |
硫化カルボニルを分解する新奇酵素COSaseの、触媒反応機構解明及びその効率化を目的に、Thiobacillus thioparus THI115株から調製したCOSaseの分子育種、及び新規COS分解微生物の探索を平成23年度に引き続き行なった。平成24年度は分解能1.20オングストロームのX線回折データの収集に成功した野生型COSaseについて結晶構造の精密化を進め、最終的にR = 0.135, R(free) = 0.170の構造モデルを得た。最終構造モデルは、登録番号(PDB ID)3VQJ としてProtein Data Bankへ登録した。構造解析結果から、COSaseはβ炭酸脱水酵素と類似した触媒機構を有することが予想されたが、触媒ポケットを形成するアミノ酸残基の一部がβ炭酸脱水酵素のそれとは異なっており、特に、Ile33が基質認識に関与する可能性が高いことが示唆された。より効率良くCOSを分解する新規微生物の探索を、大気COSの主要な吸収源である土壌から昨年度に引き続き行なった。その結果、斜面培地入りの試験管に30 ppmvCOSを添加した装置を用いる簡易スクリーニング法を用いる事によって、高い分解活性を保持する真菌類を複数菌株分離する事ができた。この内、KS23、KS21、KS17の3株は30分以内にCOSを検出限界以下の濃度まで分解した。これらの菌株はいずれもCOSによる馴化の操作無しで土壌から分離されたものであり、土壌には高いCOS分解を有する真菌類が豊富に生息する事が示された。一方、常時高濃度COSに晒される火山ガス噴出地域の土壌からは、上記真菌を超えるような活性を有する分解菌は未だ得られず、COSの毒性に対して耐性を持つ微生物の優先する生態系が形成されていることが考えられる。今後は高分解菌の探索を継続すると共に、上記3真菌株の分解特性を調べる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COSaseの立体構造について高分解能(1.20 オングストローム)での構造解析に成功し、その結果をもとに、触媒機構や基質認識に関して具体的な検討を始めている。平成24年度から開始した部位特異的変異体を用いた活性評価、結晶解析を今年度中に行うことにより、当初の研究目的は達成できると考えられる。COS分解微生物については強力なCOS分解能を有する複数株の真菌を森林土壌から分離することが出来た事から、今後はこれらの真菌株を中心に応用へ向けた調査を行なう事で、研究目的は達成出来ると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度までに行った構造解析結果、および、最近結晶構造が報告されたAcidianus sp. strain A1-3 由来の二硫化炭素加水分解酵素の立体構造の比較をもとに、新たな変異体を作製し、COSaseの基質であるCOSの認識機構をさらに詳細に検討する。森林土壌から分離された新規COS分解真菌については、分解条件や分類学的位置について詳細に調べ、これらの分離株の応用への可能性を探る。また、これらの真菌株のCOS分解反応とβ炭酸脱水酵素との関連についても比較を行なう。COS分解細菌についても、さらに土壌からの分離を試みる。
|