研究課題/領域番号 |
23310056
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉田 天士 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80305490)
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研究分担者 |
左子 芳彦 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60153970)
金子 貴一 京都産業大学, 総合生命科学部, 准教授 (80370922)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | アオコ / ミクロキスティス / シアノファージ / CRISPR / メタゲノム |
研究概要 |
アオコ環境におけるファージゲノムならびにミクロキスティスゲノムのウイルス耐性遺伝子領域に存在する無数のファージ由来配列(CRISPRスペーサー)を大量に解読して、環境におけるウイルス・ミクロミスティスの多様性を明らかにし、アオコ防除技術の確立に向けた基盤を構築することを目的としている。24年度の成果は下記のとおりである。 1.アオコメタゲノム解析:京都市広沢池より計94株のミクロキスティスを分離し、CRISPR配列の解析、ならびに種内多様性の指標である16S-23S rRNA内部介在配列に基づく系統解析を行った。その結果、本環境にはウイルス感染履歴の異なる複数の株が共存しており、過去の感染履歴が一致し、ある時点で異なる感染履歴を示す株も認められた。一方、尾部タンパク質配列の大量配列解析から、大きく5つの異なるMa-LMM01タイプファージが存在し、密度が多くなるとそれらの1~2塩基異なる配列が出現した。以上より、ファージとミクロキスティスの遺伝的多様性は、頻度依存選択が働くことによって維持され、宿主との軍拡競争型共進化により創出されることが明らかとなった。 2.ファージ耐性獲得機構の解明:前年度までに明らかとしたファージ感受性野生株で大量に発現する約90kDaのタンパク質の遺伝子配列について、変異株と比較を行ったが、上流の転写調節領域を含め両者で完全に一致し、変異株においてパク質の転写制御における変異が起こっていることを示唆した。 3.新規ファージの分離:広沢池より新たなファージを分離することに成功した。そのゲノムの一部配列を決定したところMa-LMM01タイプとは完全に異なり、データベースに登録されている他のファージとも大きく異なった。全ゲノム解読に向けた解析を進めている。 これらの成果は、微生物部門の国際的トップジャーナル3報に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度にメタゲノム配列データを得ることができたことにより、本年度は、ミクロキスティス株の分離株についてのウイルス感染履歴を多く解読するに至った。これにより、本感染系がウイルス―ファージとの共進化を知るうえで極めて貴重なモデルとなりうることを示し、国際的にも高い評価を得た。さらに、新規ファージの分離に成功するとともにそのゲノム解読に向けたシーケンスを終えたことから、計画以上の進展と判断するに至った。
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今後の研究の推進方策 |
新規ファージの分離に成功したことから本年度はそのゲノム解読と新たな感染戦略の解明することを優先する。さらに、大量並列解析によって昨年度までに得た、CRISPRスペーサー配列とメタゲノムデータの解析を進め、宿主-ファージの組み合わせの多様性の実態解明を目指す。また、ファージ耐性に寄与する遺伝的変異を明らかにするためファージ耐性変異株のゲノム解読も試みる。
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