研究課題/領域番号 |
23310057
|
研究機関 | 大阪産業大学 |
研究代表者 |
尾崎 博明 大阪産業大学, 工学部, 教授 (40135520)
|
研究分担者 |
高浪 龍平 大阪産業大学, 工学部, その他 (00440933)
白川 卓 神戸大学, 保健学研究科, 准教授 (30171044)
谷口 省吾 大阪産業大学, 工学部, その他 (40425054)
濱崎 竜英 大阪産業大学, 人間環境学部, 准教授 (50340617)
RABINDRA Giri 大阪産業大学, 大学共同利用機関等の部局等, その他 (70568493)
藤川 陽子 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (90178145)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | PFOS / PFOA / 有機フッ素化合物 / 分解 / UV / 電気分解 / 熱脱着法 / 生体影響 |
研究概要 |
本研究では、PFOS(Perfluorooctane sulfonate)やPFOA(Perfluorooctanoic acid)などの各種有機フッ素化合物(PFCs)の分解等に関し、以下の研究成果を得た。 1.真空紫外線(VUV、110W)を照射したところ、PFOAはほぼ100%分解され、F-への脱フッ素化率も70%以上になった。とくにVUV照射(20W)では副生成物の濃度はごくわずかであり、非常に効率的に分解できた。 2. 下水二次処理水中でPFOSやその類縁物質を含む混合溶液の電気分解を試みたところ、PFOS、PFHxS(C6)、PFHpS(C7)、PFDS(C10)が90%以上除去されたが、PFOS分解に伴って低分子有機フッ素化合物が気相中に移送されることが示唆された。PFOS分解後の溶液中成分の飛行時間質量分析計による分析から、PFOSではC7F15OHと低分子有機フッ素化合物のCF2O3Hにまず分解される可能性があることが示された。 3. PFOS、PFOA、PFNA(C9)および4種のフッ素テロマーアルコール類(FTOHs)を対象に間接熱脱着法による加熱処理を試み、沸点が低い物質ほど土壌からの除去が進み、いずれも400℃で土壌からほぼ消失することを明らかにした。また、総フッ素分析により、400℃の加熱においては土壌等の残留部からフッ素化合物は検出されず、同様にPFOSが土壌から除去されていることが確認された。気相中にもPFOS は無く、有機または無機の有機フッ素化合物及びフッ化物イオンとして気相中へ移行したことを確認した。 4. PFOAやPFOSの分解操作時に見出される副生成物であるPFBSの細胞生存率、ROS生成量、ミトコンドリア膜電位ならびにPPARα活性化能をなどを指標に細胞への影響について検討したところ、細胞上では有意な影響が認められなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
PFOSやPFOAをはじめとする有機フッ素化合物を構成するC-Fの結合力は極めて強く、それらの分解法の開発が急務の課題になっている。本研究課題では、水中のPFOSやPFOA及びそれらの類縁化合物(C8~C4)、固相中のPFOSとその前駆体を対象に紫外線処理(真空紫外線を含む)法や電気分解法による分解挙動と効率的な分解手法の開発について重点的な検討を行った。紫外線処理法ではUVC(185nm)のみでなく真空紫外線(254nm)を含むより強力な低波長紫外線(VUV)の照射により、さらにはKI添加することによりPFOAとその中間生成物が効率的に分解されることを見出し、PFOA分解に関する目標は十分に達成された。紫外線法によるPFOSの分解率は低く、より効率的な分解法の確立について検討を続けている。 電気分解法については、極めて分解が困難なPFOSについても90%以上の除去率が得られ、分解生成物の同定に関する検討も進めている。LCMSMS及びミリマス(飛行時間型分析計TOF-MS)の利用により同定された物質もあるが、低分子量で揮発する副生成物も認められた。これらの大半は平成24年度の計画をほぼ達成した。 固相中の有機フッ素化合物については研究計画に沿って熱脱着法による分解について検討した。 その結果、熱分解特性について新規な知見が得られた。さらに、従来明確でなかった分解生成物の挙動についても新規な知見が得られた。各種有機フッ素化合物、無機フッ素化合物、フッ化物イオンを分析するとともに総フッ素分析(活性炭吸着と燃焼イオンクロマトグラフ法を併用)を行うことによりフッ素収支を得るなど、計画した内容以上の成果を得た。生体影響については継続的な検討を行ったが初年度の成果が大きく、細胞への影響を示す新たな知見は得られなかったが、分解生成物に関する研究が進展しており、さらに検討を進める。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度までにおいては、PFOAやPFOS及びそれらの類縁化合物に紫外線分解法、電気分解法、熱分解法(熱脱着法)などによる分解特性や分解効率に関する多くの知見が得られた。また、それらの物質の分解解析や副生成物についても新たな知見を得た。しかし、分解機構の解明、例えば、化合物中のどの部位の化学結合(C-CやC-Fなど)が切断されるのか、あるいは、熱分解に伴い揮発する物質は何かなど、分解機構や副生成物に関しては未知の部分が残されている。有機フッ素化合物は最終的にC-F結合が切断され、Fがフッ化物イオン(F-)として脱離することが望ましいが、有機フッ素化合物内の各原子あるいは原子団間の結合エネルギーとの関わりでさらに検討する必要がある。平成25年度においてはより分解効率の高い効率的な分解条件のほか、副生成物や分解機構についてさらに検討を加える。また、上記の一連の結果に基づき、有機フッ素化合物の分解処理法と処理システムの構成、生体影響の観点からの同処理法の有効性、安全性について検討を進め、研究を総括する。
|