研究課題/領域番号 |
23310061
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
渡邊 隆司 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (80201200)
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研究分担者 |
片平 正人 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (70211844)
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キーワード | バイオファイナリー / リグニン / バイオマス / 木材 / バイオミメティック反応 |
研究概要 |
木材全成分可溶化法の開発と構造解析 木材を微粉砕後、全成分を各種溶媒に可溶化させ溶解性を評価した。良好な可溶化物は、木材の全溶解物は超高感度のクライオNMR(600M Hz)で構造解析し、溶解による構造変化を追跡した。また、リグニンの分岐構造に注目し、MALDI-TOF-MSによる、リグニンユニット結合を解析、構造を推定した。その結果、リグニンの不均一性を質量分析で解析できること、リグニンユニット間結合として、モノリグノールが結合した後に水がベンジル位に付加して生成するβ-0-4構造と、β-β、β-5などラジカルのカップリング反応のみにより生成する結合を識別できることを明らかにした。また、これらを構成するグアイアシルおよびシリンギル核を識別できることを明らかにした。これらの構造解析法を用いて、木材の全可溶化物や、その反応物を今後さらに詳細に解析する。 リグニン分解反応系の構築 新規なリグニン分解反応を、リグニンモデル化合物1-(3,4-dimethoxyphenyl)-2-(2-methoxyphenoxy)-1,3-propanediol(GOG-Me)およりユーカリやスギ材を用いて探索した。具体的には、モリブデン、タングステン触媒などによる分解を試験し分解が起こる反応条件を決定した。また、生成した分解物を、GCMS、MALDI-TOF-MSなどにより分析した。これらの実験により、リグニン分解力に優れた金属と配位子の組み合わせ、及びその反応機構を推定した。また、ユーカリやスギのMWLをDMSO/無機塩混合溶媒に溶解し2.45GHzマイクロ波加熱を行い、分解物を分析した。その結果、リグニンや糖由来の分解物を同定した。今後は、さらに反応の高効率化を目指し、触媒や溶媒の探索を継続して実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
木材可溶化物の構造解析で、質量分析によるリグニンユニットの結合情報を得ることに成功した。また、関連論文を出版した。NMRの構造解析においても、反応による構造変化を解析することに成功した。一方、可溶化物の酸化分解も実験し、分解物の同定も行ったが、より有効な反応系をさらに開拓する必用がある。このことから、(2)と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
木材の可溶化溶媒に関しても継続して、実験を実施する。見出した溶媒系を含む各種溶媒中で、木材の成分分離に適した反応系を引き続き探索し、反応物を詳細に解析する。酵素反応より反応効率が高い合成触媒による分解系探索に注力する。これにより、バイオマスの総合変換に適した分離反応系を見出す。
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