研究課題/領域番号 |
23310062
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
藤川 安仁 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (70312642)
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キーワード | 走査トンネル顕微鏡 / 光電子顕微鏡 / 有機半導体 |
研究概要 |
本年度においては、現在稼働中の四探針STM装置に対して有機薄膜成長システム(購入物品)をドッキングさせ、さらに光電子顕微鏡装置(購入物品)を装備する事により、四探針STM装置と電子顕微鏡装置を統合的に運用出来る有機薄膜成長観察システムの立ち上げをまず行った。予定通り有機薄膜成長システムの導入とSTM装置への接続は年度内に終了し、真空度など装置のパフォーマンスが今後の実験計画の遂行に足るレベルに達している事を確認した。光電子顕微鏡装置の導入については、納入業者の都合により装置の納入が次年度の10月となったため、装置を使用した基礎的な表面観察を含めて研究計画を次年度12月まで延長し、有機薄膜成長に使用する電極パターンを作製したシリコン基板の観察に成功して、装置の立ち上げに関する計画を完了する事が出来た。 以上の装置立ち上げと並行して、有機薄膜成長制御に関する基礎実験を開始して、装置を利用した有機単分子薄膜の作製に関する基礎実験を行うと共に、基板に使用する高抵抗SOI表面の清浄化プロセスを確立する事を試み、Si(111)-7x7表面をSOI構造上に再現性良く作製する技術を確立した。さらに、ペンタセンなどの良質薄膜が成長する事が知られており電極構造として有用であると考えられるビスマス薄膜の成長制御と電気伝導測定に関する研究を行い、単原子層レベルの薄膜の電気伝導のシグナルを検出する事に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光電子顕微鏡の納入が業者の都合により遅れたため、研究計画を9ヶ月延長する事となったが、有機薄膜成長システム自体の納入は年度内に終了して予定通りの性能を発揮しており、有機薄膜構造の作製に関する基礎実験も予定通り開始することが出来たので、研究計画は概ね順調に進行していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
前年度から引き続き有機薄膜成長機構を単分子層レベルで理解するために、成長観察システムにおける光電子顕微鏡観察と四探針STM装置における分子レベル構造観察を併用した構造解析を行い、薄膜成長の最適化の指針を得るための研究を遂行していく。さらにシリコン酸化膜や極薄SOI構造上のシリコン清浄表面など、高抵抗基板を使用して薄膜構造の作成を顕微観察下で制御しながら行い、四探針STMを使用してその電気伝導特性を測定する事により、薄膜の電気伝導およびデバイス特性の最適化に関する直接的な指針を得ていくための研究を進める。現状で研究計画の大きな変更の必要性は認められない。
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