研究課題/領域番号 |
23310062
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
藤川 安仁 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (70312642)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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キーワード | 走査トンネル顕微鏡 / 光電子顕微鏡 / 有機半導体 |
研究概要 |
本年度においては、ピセン薄膜成長機構を単分子層レベルで理解するために、成長観察システムにおけるPEEM観察と四探針STM装置における分子レベル構造観察を併用した構造解析を行い、ペンタセンの結晶成長との類似点や相違点を明らかにしていく事によりピセン薄膜成長機構の理解を進め、薄膜成長の最適化の指針を得ることを目的として研究を進めた。現在シリコン表面上にピセンの極薄膜を作製し、その構造をナノ・原子スケールで観察しており、その形成機構について検討を行っている。また、比較対象となるペンタセンの極薄膜においては、その成長初期過程について詳細な検討を行い、初層の核形成密度より2層目の核形成密度が低い、「逆島状成長」とも呼べる現象が起こっており、2層目の結晶方位はは初層の結晶方位によって核形成時に決定されるものの、初層の粒界を越えて成長してしまうため、初層と2層目の間のエピタキシャル方位は必ずしも一致しない事などを見いだした。この結果は国際的にも評価の高いAdvanced Functional Materials誌に掲載が決定している。さらに基板として使用するSOI構造上における電極作製技術についても研究を進めており、SOI清浄表面上に金属を数原子層程度制御して積層し、金属的な電気伝導を検出して原子スケールで膜厚に対して振動する現象を見いだしており、有機薄膜を含めた統合的な積層構造の作成技術の基礎となる技術を確立しつつあると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有機超薄膜の成長制御に関しては、高いインパクトファクターを持つAdv. Funct. Mater.誌に論文が掲載されるなど、概ね順調に成果が出つつあり、またその周辺技術に関しても高度積層構造の実現に向けて興味深い研究成果が得られつつある状況である。このまま研究計画を進めて有機高度積層構造の作製による新規物性発現を目指していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度から引き続きピセン薄膜成長機構を単分子層レベルで理解するために、成長観察システムにおけるPEEM観察と四探針STM装置における分子レベル構造観察を併用した構造解析を行い、ペンタセンの結晶成長との類似点や相違点を明らかにしていく事によりピセン薄膜成長機構の理解を進め、薄膜成長のさらなる最適化の指針を得るための研究を進める。さらに今年度においては、ピセン薄膜のドープ制御に関する研究を継続していくと共に、研究計画初年度から行われているピセンを中心とした有機薄膜成長に関する原子分子レベル観察の知見を生かして、ピセンとペンタセンの間の交互積層構造の作成過程を分子レベルで制御する事に注力して研究を進めていく予定である。
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